"3年の任期付き"でも教員経験者が殺到!鎌倉市が「市費で正規教員採用」に踏み切った訳 若手からベテランまで全国から123名が応募

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「関東圏を中心としながらも、東北や中部地方など全国から積極的に応募いただいている」と、小原氏。公立・私立校の現職教員や、教職を離れて民間企業に勤めていた人が教員に戻りたいと応募したケースのほか、海外の日本人学校で経験を積んだ教員の応募も複数あったという。初任から3~4年程度の若手教員から、管理職経験者や教育委員会での勤務経験のあるベテラン教員まで、応募者の年齢層は幅広い。

3年という任期付きでありながら、多くの応募者が集まった理由について、小原氏はいくつかの要因を挙げて分析する。

「まず、県費負担教職員制度の下ではどこに配属されるかがわからないのに対し、『必ず鎌倉市内の学校に配属される』という点は魅力だったのではないでしょうか。また、『鎌倉スクールコラボファンド』やLTE対応のICT環境といった、本市の恵まれた教育環境で働きたいと思ってくださった方も多いのかもしれません。さらに、近年は若い世代の教員の方々を中心に『成長したい』というニーズが強く、今回の募集はそのような挑戦志向を持つ方に響いたのではないかという手応えがあります」

また、エンが運営する採用支援サービスを通じて公募を行ったことも、応募者増の一因とみられる。同社では、メインターゲット層が異なる3種類の転職サイトでの求人掲載を行うとともに、SNS広告や同社のSNSアカウントでの拡散、プレスリリースの発信などを実施。こうした広報戦略により、公募情報がより多くの教員にリーチした可能性が考えられる。

「質」重視、「伴走型の教育行政職」も採用予定

今回の応募は8月末で締め切られ、9月から11月にかけて選考を行い、11月下旬から12月上旬に合格者を決定する予定だ。選考は、「書類選考・ビデオ面接・対面での個人面接」の3段階で実施する。

採用された教員の勤務は2026年4月からを予定している。応募者のキャリアが多様であることから、採用後の研修は一律では行わず、「個別の状況に応じて丁寧にコミュニケーションを取り、スムーズに迎えられるよう努めていきたい」と小原氏は話す。

市費負担教員制度に対しては、学校現場の期待も大きい。小原氏が市教育長の高橋洋平氏と共に市内の全小中学校26校を回って教育大綱のビジョンを伝える時間を設けた際、市費負担教員の採用についても説明をしたところ、現場の教員からは驚きとともに、「しっかり戦力になる先生を採用してほしい」との声が多く寄せられたという。

「市教委のあり方を『管理型』から『伴走型』へと変えたいと考えており、市費負担教員の採用と並行して、学校に対して伴走型の支援ができる教育行政職の採用にも力を入れていく予定です」

市費負担教員制度では、今後数年かけて最大で30名程度の採用を見込んでいるが、「今回の採用は学校としての組織的な成長戦略のための採用なので、人数の枠を埋めることを優先するのではなく、あくまでも質にこだわっていきたい」と小原氏は話す。

市費で正規教員を採用しようという鎌倉市の取り組みは、教育の質の向上に真正面から向き合う、まさに「本気度」を示す挑戦だと言えるだろう。この取り組みが同市の教育にどのような変化をもたらすことになるのか、今後の動向が注目される。

(文:安永美穂、注記のない写真:エンのプロジェクトサイトより)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
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