大企業を中心に遅れるシステムの「モダン化」。"DX後進国"日本で勢いに乗る総合コンサルの実態

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例えば「全社変革」をうたうアクセンチュアは、基幹システムの刷新支援でリードしており、下流のシステム開発力では群を抜く。同社は25年に入り、ゆめみ、アイデミー、SI&Cと計3件のM&Aを実施。同8月末に買収が完了したSI&Cでは、エンジニアを中心とした約1500人がグループに参画した。日本法人の売り上げは9年間で6倍、社員数は2万7000人(6月時点)に達する。

アクセンチュアの後を猛追しているのがベイカレントだ。新卒社員を特定のプロジェクトや役割に固定しない仕組みなどが評判を呼び、24年2月期からの5カ年で、CAGR(年間平均成長率)20%の売り上げ増と同水準の採用者数増を計画。25年4月末時点の社員数は約6000人におよび、ビッグ4と呼ばれる監査法人系コンサル会社(デロイト、EY、PwC、KPMG)の規模を上回る。

26年4月の新卒採用は昨年比約1.5倍の約800人で、日本企業全体の25年新卒採用人数の実績に照らすと6位に位置する。

「われわれには、100〜200人規模のコンサルタントをクライアントにアサインできる機動力と、戦略策定だけでなく現場に入り込み、顧客と一体となって具体的な実行推進までを支援する能力がある」とベイカレントの則武譲二常務執行役員は語る。

「2025年の崖」

個別の支援領域で動きが目立つのは、「2025年の崖」への対応だ。

デロイト トーマツ コンサルティングは2025年4月から、レガシーシステムのモダナイゼーション(刷新)を支援するサービスの本格展開を始めた。デロイトがアメリカで特許を持つ独自のツールを使い、メインフレームで稼働しているプログラミング言語「COBOL」のコードをJavaコードへ1対1で自動変換。プログラム構造の変更を最小限に抑えることで、テスト期間の短縮と不具合発生のリスクを抑制することなどを売りにする。データベースやバッチジョブなどを含めて、フルスタックでのオープンシステムへの自動移行も可能にする。

デロイトの森村知弘スペシャリストディレクターは、「日本企業では長年にわたるシステム運用の間にCOBOLのコードをコピーし修正を加えたことで、システムが大規模かつ複雑化し、『技術負債』が蓄積しているケースが多い。巨大なシステムを一気にクラウドネイティブ化するのはリスクが非常に大きいため、われわれのモダナイゼーション支援は、とにかくメインフレームから安全に早く出ることを重視している」と語る。

野村総合研究所(NRI)は2025年3月から、レガシーシステムの「現行可視化・影響分析サービス」を提供開始。既存の設計書やコード、マニュアルなどから必要な情報を抽出し、AIによって新たなシステムでも活用可能な資料に再構築する。「製造業では各拠点に個別のシステムが散在し、本社部門が全体像を把握できていなかったり、 合併や買収を繰り返した結果、システムが継ぎはぎの状態になっていたりするケースが多い。 作成された正確な資料を基に、システム変更がもたらす影響を分析することで、効率的かつ効果的なモダナイゼーションが実現できる」と、NRIシステムコンサルティング事業本部の宇津亮太グループマネージャーは語る。

とはいえ、コンサル会社の躍進が日本のDXにとって必ずしもよいことだとは限らない。

あるSIer(エスアイヤー)会社の幹部は、「事業会社が本来持つべきDXの主導権がコンサルのものになってしまっている」と危機感を示す。金融機関向け基幹系システムのモダナイゼーションを手がけるスタートアップ企業・LiNKX(リンクス)では、大手コンサル会社が10億円で出した見積額の10分の1以下で機能開発を行えた事例があったという。「基幹系の刷新は段階的でもよい。発注者と業者の関係ではなく、技術の提供や支援をしながら企業の人材育成をしていくことが大事だ」と、オサムニア・モハメッド社長は語る。

待ったなしの日本のDX。企業はコンサルに振り回されず、自ら戦略を生み出し、実行することが求められている。

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二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

2008年東洋経済新報社入社。産業担当や週刊東洋経済編集部の大型特集を歴任。2020~21年に会社を休職して、米国に留学(フルブライト奨学生)。帰国後は再び週刊東洋経済編集部に所属の後、解説部で米国の政治経済やテック情勢を担当。2024年7月から3度目の週刊東洋経済編集部所属。直近では「上場企業クライシス」「半導体異変」「進撃のアクセンチュア」などを取りまとめた。

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