大企業を中心に遅れるシステムの「モダン化」。"DX後進国"日本で勢いに乗る総合コンサルの実態
システム開発のトラブルに詳しい日比谷パーク法律事務所の上山浩弁護士は「成果物の詳細を定める要件定義を済ませ、その基本設計が終わった時点で、ベンダーから下流工程の精度の高い見積もりが出てくる。そこで到底、投資効果が説明できないような莫大な費用が提示された場合に、大きなトラブルに発展する」と指摘する。

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炎上が起きる責任は、開発を行うベンダー側にもある。
グリコの場合は主幹ベンダーを担ったのはデロイト トーマツ コンサルティングだが、新システムの導入を一度延期した後の検証に関するコミュニケーションが不十分だったとみられる。NHKに訴えられたIBMは、独自に開発した自動解析ツールを過剰にアピールしてしまった可能性がある。
日本のSIer業界にはかねて、過度な細分化に陥っているという問題もある。
香港の投資ファンド、アセンダー・キャピタルによると、日本には150社以上の上場SIer会社が存在し、効率的な経営やグローバル競争力が阻害されているという。
「海外ではSAPなどの標準化されたエンタープライズソフトウェアを顧客が導入する流れに適応し、SIer業界は大規模プレイヤーに統合された。ところが日本企業は長年、カスタムメイドのオンプレ型ITシステムを好んできたため、多くの小規模SIer企業が特定顧客との排他的な関係を維持しており、日本全体のDXや標準化が遅れる要因になっている」と、パートナー兼最高投資責任者のジャン=シャルル・ティセラン氏は指摘する。
NTTデータ、富士通、日立製作所、 NECなど伝統的なSIer企業においても、「ミッションクリティカルなシステム統合と長年の関係性により顧客に深く根差しているが、クラウド、SaaS、標準化されたソリューションへの適応が遅い傾向にある」(ティセラン氏)。
一方、ITベンダー間では熾烈な競争が行われている。
最も勢いがあるのが、総合コンサルティング会社だ。コンサル会社は従来の専業ITベンダーと異なり、システムの開発・実装にとどまらず、業務プロセスやデータ利活用など企画の構想策定まで支援できる点を売りにする。
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