大企業を中心に遅れるシステムの「モダン化」。"DX後進国"日本で勢いに乗る総合コンサルの実態
IMD世界競争力センターの分析では、日本のデジタル競争力は世界で31位。同調査で日本は、「デジタル/技術的スキル」が最下位の67位だった。25年の崖は、過去の話ではなく、現在進行形の問題なのだ。

絶えない「炎上案件」
レガシーシステムからの脱却が遅れる中で続出しているのが、プロジェクトの「炎上」だ。
24年4月、菓子大手・江崎グリコで基幹システムの切り替え時に大規模な障害が発生。冷蔵(チルド)品の出荷が停止し、主力の「プッチンプリン」など17ブランド82品目などが一時スーパーやコンビニから姿を消した。
グリコは基幹システムを旧来のシステムからSAPの最新製品に切り替えたが、その際に一部の受発注や出荷業務に影響するトラブルが発生した。グリコ自身がシステムの全体像を把握しておらず、同社特有の業務プロセスに合わせた要望や要件をベンダーに丸投げしていたことなどが原因だった。
NHKは25年2月、日本IBMを相手取り、約54億円の既払い金の返還と損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴した。NHKは22年12月、営業基幹システムをクラウドサービスに刷新するため、現行システムの使用期限である27年3月を納期とした業務委託契約を日本IBMと締結。その1年3カ月後にIBM側から納期延期の申し出があり、NHKはIBMとの契約を解除し支払代金の返還を求めたが、返還されなかったため訴訟に至った。
訴訟に発展した理由は、NHKの既存システムがIBMの想定していた以上に、複雑に作り込まれた構造で難易度が高かったことだとみられている。
地方銀行でもトラブルは起きている。24年12月に滋賀銀行が次世代基幹系システムの開発を中止すると発表。システムに組み込むパッケージの提供元だった日立製作所は、滋賀銀行に和解金80億円を支払っている。25年2月には、伊予銀行も同パッケージを活用した基幹系システムの開発中止を発表。伊予銀は滋賀銀システムとの相互利用を前提にしていたとされ、滋賀銀の担当者は開発に当たって、「想定を上回るハードルがあった」などとしている。
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