条件反射的な円売り「高市トレード」の今後。過度な円安を修正する動きにもつながった小泉候補の存在感、トレード巻き戻しの兆候をかぎ取る声も

為替市場では、高市早苗前経済安保担当相の自民党総裁選出馬を想定した条件反射的な円売りの「高市トレード」が広がりを見せてきたが、ここにきてその動きに変調もみられる。ドル自体の軟調に加え、同氏が出馬しても、打ち出す政策が市場の思惑通りとはならないリスクもくすぶっており、早くもトレード巻き戻しの兆候をかぎ取る声もある。
小泉氏への見立て
高市氏といえば昨年の総裁選時、安倍晋三元首相の「アベノミクス」になぞらえた「サナエノミクス」を掲げ、経済成長・金融緩和など財政拡張的な主張で知られてきた。市場では「海外勢などによるシステムトレードの反応か、メディアで同氏の名前が出るだけで10銭単位でドル/円が跳ね上がる」(国内銀行の為替セールス担当者)と意識されている。
ところが、そんな「機械的な円売り」(みずほ証券チーフ為替ストラテジストの山本雅文氏)が反転する場面があった。自民党の小泉進次郎農水相が総裁選に出馬する意向を地元に伝達したと伝わった16日、ドルが147円半ばから146円後半へと下落する動きが続いた。
日米の金融政策決定会合を控える中での持ち高調整だけでなく、小泉氏が高市氏の有力な対抗馬になるとの見方から「一部で高市トレードが巻き戻された」(国内銀行の為替セールス担当者)との指摘が聞かれた。小泉氏が当選する場合、その政策は市場が高市氏に期待するほど緩和的ではないとの見立てが背景にある。
とりわけ、小泉陣営の選対本部長に加藤勝信財務相が就任する見通しと伝わったことが、過度な円安を修正する動きにつながったとみられる。「保守派で一定の存在感のある加藤氏が陣営に加わり、財政拡張には向かわないという思惑が強まった可能性がある」(ニッセイ基礎研究所主席エコノミストの上野剛志氏)という。