傾きマンション、三井不の補償案は「妥当」か 住民はどう対処すべき?専門弁護士の見解
「その一方で、今回の問題がマンション建設業界一般の問題ではなく、特定の人物が行った異常な事態であるというのであれば、事業主や施工会社側はよく協力して、速やかに改ざんの有無の調査報告を行い、建物の安全性に問題がないということを証明してほしいです。そうでなければ、市民の不安はいつまでも、取り除かれることがないのではないでしょうか」
住民との「合意形成」をいかに円滑におこなうかが課題
三井側から補償案が示された形だが、法的責任については、どう考えればいいだろうか。
「さきほどの繰り返しになりますが、杭工事のデータ改ざんの問題と建物の安全性の問題は、切り分けて考える必要があります。そして、厳密には、建物に『瑕疵(かし)がある』とか、『安全性が確保できていない』ということが証明されて初めて、事業主の法的責任を問うことができることになります。しかし、今回は事業主が任意で補償の対応を行うとのことです。その点では住民の方々の負担は軽減されたと言えるのでないでしょうか」
住民に提示された補償の内容については、どう考えればいいだろうか。
「データ改ざんによって住民の方々の信頼を損ねたということもあってか、項目を見る限りは、ある程度充実した内容という印象を受けます。しかし今回のような大型マンションでは、住民の方々の置かれている状況はそれぞれ異なり、合意までにかかる時間もさまざまですので、最終的にいつどのようにして納得のいく補償額を算出するのか、という問題は残されたままです。
合意形成までにいたずらに時間を費やすようなことになると、さらに住民の方々からの信頼を損なうことにもなりかねませんので、いかにして企業の社会的責任を果たしていくのか、これからの事業主の対応を注目していきたいです」
そのほか、現状では、どんな点が課題として残っているのだろうか。
「区分所有建物の権利関係は複雑です。そうした中で、建て替えに向けて合意形成をどのようにして円滑に行うのかという点は課題でしょう。また、事業主側についても、売主と複数の施工会社との間で責任をどのように分担するのかという点も明らかになっていません。残された課題は多いと言えそうです」
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