マツダ、「RX-VISION」でロータリー復活へ 強みの圧倒的な出力、燃費規制クリアなるか

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1978年から24年間も販売された往年の名車「RX-7」

それでも、マツダが研究開発に取り組み続けるのは、ロータリーエンジンが「マツダの財産」(小飼社長)とも言うべき象徴的な存在だからだ。マツダのロータリー車のユーザーは世界に約100万人。マツダ車には昔からコアなファンが多いが、エンジンを分解して洗う人もいるほど、ロータリーファンは熱いという。代替えを希望する声も多く、マツダとしてもそうしたユーザーとの繋がりを大事にしたいとの思いが強い。

加えて、マツダに吹く追い風もロータリーエンジンに取り組む好機と言える。リーマンショックに襲われた2008年度からマツダは4年連続で最終赤字を計上。再起をかけ、エンジンや車体などの設計を刷新。高い環境と走行性能を実現した「スカイアクティブ」技術を搭載したSUV(スポーツ多目的車)の「CX-5」がヒットし、2012年度に黒字転換した。

業績絶好調の中で見据える次の展開

マツダはデザインも刷新。これまでは車種ごとにばらばらだったが、「魂動(こどう)」という躍動感あふれるデザインテーマで統一。車種は違ってもデザインでマツダ車であることをわかるようにした。こうした取り組みが消費者の心をとらえた。

「CX-5」以降、「アテンザ」や「アクセラ」など新型車は軒並み好調で、2014年度は過去最高益を2年連続で更新。今年度も好業績の見通しだ。経営危機から復活を成し遂げた今こそ、気を緩めず、次の展開を見据えた研究開発に力を傾ける堅実さがうかがえる。

マツダの世界シェアは2%。小飼社長は就任以来「選ばれ続けるオンリーワンブランド」を目標に掲げる。2%の熱烈なファンと深い絆を築くことがブランド力を高め、会社の成長につながるという考えだ。

マツダが次の飛躍をする上でも、ロータリー車を再投入できるかどうかは大きなカギを握りそうだ。
 

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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