首相辞任でも自民党の"地盤沈下"は止まらない? 石破政権が1年足らずで「無念の退陣」に至った必然
しかも議員票では、75票を得た小泉進次郎農水相に大きく差を付けられたうえ、5位の小林鷹之元経済安全保障担当相にもわずか5票差に迫られた。それでも決選投票で石破氏が189票の議員票・26票の都道府県票の計215票を得て高市氏に勝利したのは、岸田文雄前首相と菅義偉元首相が石破氏側に付いたからだった。
その岸田前首相の下から、神田潤一法務政務官や小林史明環境副大臣らが総裁選前倒しの声を上げたことは興味深い。また、石田真敏元総務相や、かつて水月会(石破派)に在籍した田村憲久元厚生労働相といったベテラン勢も総裁選前倒しに賛同した。
総裁選前倒しを求める署名について、逢沢一郎衆院議員が委員長を務める総裁選挙管理委員会が「書面は、署名・捺印のうえ、9月8日10時から15時までの間に、議員本人が本委員会に直接提出することを原則にする」としたことにも、多数の議員が反発した。石破首相が辞任を拒否すればするほど、ますます批判の声は高まった。
混乱の収束を図ったキーパーソン
こうした現実に、「党が分裂しかねない」と懸念していたのが菅元首相だった。実際に参院選後の7月24日に党本部で麻生太郎最高顧問や岸田前首相、石破首相や森山裕幹事長と面談した際、党内の「石破降ろし」の動きについて強い危機感を示している。そして9月6日午後8時25分に小泉農水相とともに首相官邸に入り、石破首相に党内情勢を伝達。事実上の退陣勧告といえるものだった。

このまま9月8日に総裁選の前倒しを求める署名が提出されると、石破政権が倒れるのみならず、自民党が分断しかねない。それを防ぐためには、7日のうちに事を収める必要があった。40分後に菅元首相が官邸を出た後も、小泉氏は1人残って石破首相を説得している。
そもそも石破政権はその発足時から、国民から多数の支持を受けていたわけではない。NHKの世論調査では、第2次安倍政権発足時の内閣支持率は64%、菅政権発足時は62%、岸田政権発足時は49%だったが、石破政権発足時の内閣支持率は44%と最も低かった。
そして石破内閣の支持率は、参院選が行われた今年7月に31%と最低だったが、翌8月には前月比7ポイント増の38%となり、不支持率も同8ポイント減の45%となった。それでも支持率より不支持率のほうが高いことに変わりなく、ほかの世論調査でも同じ傾向にある。
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