PayPayが中国のウィーチャットペイと電撃提携!ライバル陣営と"掟破り"までして関係を築いた背景には業界構図の大変化

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一方、中国国内で守勢に立たされたアリペイも、手をこまねいているわけではない。彼らの次の一手は、視線を国外に向けたグローバル戦略「アリペイ+(プラス)」の拡大だ。

アリペイ+とは、世界各国のモバイル決済の相互利用を可能とするサービスである。中国のアリペイ以外でも、韓国のカカオペイ、フィリピンのGキャッシュ、タイのトゥルーマネー、イタリアのTinabaなど、現時点で30以上ものモバイル決済サービスが加入している。

日本でもPayPay加盟店の多くはアリペイ+に対応。店頭に書かれた対応モバイル決済サービスの多さには驚かされる。

中国以外を狙うアリペイ、日本大手も活用か

まだ、すべてのサービスで相互利用が実現したわけではないが、究極的には普段から使い慣れたモバイル決済サービスが、どの旅行先でも使えるようになることが期待される。ウィーチャットペイが中国人ユーザーを対象としたサービスに注力する一方で、アリペイは中国以外のユーザーも包摂するという対照的な戦略を打ち出している。

日本のモバイル決済はインバウンド需要の取り込みには積極的だが、日本人の海外旅行需要対応はまだほとんど動きがない。2024年時点で日本人のパスポート保有率はわずか17%、コロナ前の2019年比で約7ポイントの減少となった。円安の影響から海外旅行を楽しむ人が減っているためで、モバイル決済事業者が海外利用サービスの実装に消極的になるのも無理はない。

ただ、ユーザー体験としてはきわめて利便性が高い。筆者は台湾旅行時にLINEペイを利用したことがあるが、夜市などクレジットカードが使えない場所でも利用できる。

手持ちの現地通貨がどれだけ残っているか、追加で換金すべきかなどを悩む必要がない点はとても便利だった。そのLINEペイが日本ではサービスが終了してしまったことは残念の一言に尽きる。

もっとも、日本の大手モバイル決済サービスにも、アリペイ+を活用して海外利用機能を実装する動きがあると聞く。こちらの展開にも期待したい。

高口 康太 ジャーナリスト

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たかぐち・こうた / Kota Takaguchi

ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を続けている。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)。

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