「ネトフリに憧れるのはやめましょう」 WBCを逃した日本のテレビ業界が今こそやるべき《過去との決別》

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TBSは今回の件についてコメントを発表し、その中で「国民的関心の高いスポーツイベントを無料の地上波放送で中継することの意義や視聴者の皆さまのご期待は非常に大きいと考えており」とある。

これは「有料の独占配信」に異を唱えたいのだろうが、そう言うなら、やるべきことがあったのではないか。失礼ながら、負け犬の遠ぼえに見える。地上波で放送する意義があるからこそ、Netflixにしてやられたことは国民の期待に添えなかったと反省すべきではないか。

テレビ業界が進めていくべき2つの対策

反省するとしたら、日本のメディア業界はやるべきことが2つあると思う。

1つは、テレビ局自らスポーツライブ配信の実績を積むことだ。

Netflixは昨年来、ライブ配信を売り物に加えるべく、アメリカでNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)やWWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)の試合を配信し、巨大なトラフィックをさばいてきた。

ひるがえって、日本もテレビ各局が有料の配信サービスを持っていたり、提携したりしている。日本のテレビ局もNetflixに比するような実績を積む。そうすることで、放送も配信もこなせると、WBCIのような権利保持者にアピールできる。放送だけではもう強みにならないからこそ取り組むべきだ。

もう1つは、Netflixのような“巨人”に対抗できる体制を一致団結して構築することだ。日本のテレビ局はもはや、個々ではNetflixに太刀打ちできない。だが、合体して強くなるヒーローのように、力を合わせることで対抗できるかもしれない。

そのためには、日本テレビグループのHuluやフジテレビのFODといった個別の配信サービスを一体化する必要があるかもしれない。具体的には、有料版のTVerのような事業体を組成し、大型スポーツのライブ配信を難なくこなせるようにするわけだ。

また各局とも現在、投資のためのファンドを組成しているが、大型スポーツファンドのような形で資本力を用意しておく必要もある。国民的イベントを放送することに意義があるなら、損を覚悟で投資してもいいのではないか。もちろん、多角的なビジネスを構築して利益を最大化する努力もすべきだろう。

大きく力を合わせることで、今回のような情けない事態が起きない体制が作れるはずだ。国民の期待に、ぜひ応えてもらいたい。「憧れるのはやめましょう」の言葉は、いま日本のテレビ局に向けられている。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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