「ネトフリに憧れるのはやめましょう」 WBCを逃した日本のテレビ業界が今こそやるべき《過去との決別》
ビデオリサーチのデータと混同を避けるため、縦軸の目盛はあえて外している。一目瞭然だが、男女ともに50歳以上、とりわけ65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。午前中だからという事情はあるが、ほかの試合でも高齢者が断然多い状況は大差ない。夜の試合では若い層が少し増えるにせよ、基本的にWBCは高齢者が愛するコンテンツなのだ。

WBCの理念が「野球の楽しさを伝えること」にあるなら、この結果をどう受け止めるべきか。高視聴率だったとしても、危機感をいだかざるをえないのではないだろうか。高齢者に愛されるのはうれしいが、本来の理念や今後のことを考えると、若い層にこそ見てもらう必要があるはずだ。
Netflixは昨年、日本国内の会員世帯数が1000万世帯を超えた。データはないが、配信サービスの傾向として50歳以下の若い層が中心なのは間違いないだろう。「テレビ離れ」で地上波放送をほとんど見ない層にこそ、野球の楽しさを伝えたい。そう考えるなら、Netflixに配信権を与えるのは自然なことに思える。
両者のニーズが合致した見事なディール
一方、Netflixの思惑はどうだろう。1000万世帯を達成したとはいえ、若い層が中心。次のステップへ進むなら、より高齢者層を狙うのが今後の成長のカギになる。それはつまり、テレビをよく見る層であり、前回のWBCをテレビで視聴した高齢者たちだ。
だから、WBCの配信権を独占的に獲得することで、高齢者層をがっちり獲得する可能性が出てくる。「イカゲーム」でも「地面師たち」でも「新幹線大爆破」でも獲得できなかった層をWBCでつかめるのだ。
そう考えると、Netflixの現ユーザー層に見てもらいたいWBCIの意向と、WBCファンの高齢者層をつかみたいNetflixの意向が、見事に合致して今回のディール(取引)に至ったといえる。
世界では、スポーツのライブ配信が大きな潮流になっている。それは、既存の地上波中心の見せ方では今後がないとの強い危機感からだろう。
日本は地上波テレビが強いと言われ、これまでは必ずしもこの潮流に乗る必要がなかった。だがWBCIの選択により、日本にもいよいよ本格的に世界の奔流が到達したといえそうだ。日本のメディア環境は実はそこまで変化しているのだ。
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