本当に意味のある技術ならわかりやすく伝えられる--李英熙(イヨンヒ)・サムスン電子専務携帯事業グローバルマーケティング責任者
新しい経験に対する欲求はどこでも同じ
──市場調査に頼らず、故スティーブ・ジョブズ氏のセンスから出発したアップルとは正反対ですね。
個人的にサムスンがうまいと思うのは、お客様の声をよく聴いて製品に反映する点だ。もちろん画期的な製品を生み出すには技術力も必要。しかし、それ以前に、お客様がどのようなものを求めているか、何を不便と感じているかを理解することが重要で、私たちはここから製品開発のモチーフをつかんでいる。
──世界各地でニーズが異なる中、国際競争力のあるグローバルモデルに仕立て上げるポイントは。
全世界のどこにでも共通する普遍的なニーズはある。これを私たちは「ユニバーサルトゥルース(普遍の真理)」と呼んでいるが、人間として求める「ワオ!」という新しい経験に対する欲求は、根本的にどこでも同じだ。地域ごとのニーズに逐一応えるのではなく、さまざまなニーズの共通点を探し出して、直感的で便利に使える製品にまとめ上げる。技術のための技術ではなく、「ミーニングフルイノベーション(消費者にとって意味のあるイノベーション)」を作り出し、消費者に「ワオ!」と言ってもらえる経験を生み出すことが大切だ。
弊社には「MIWE(ミーウィ)」という言葉があって、誰もが普通に使っている。Meaningful Innovation, “Wow” Experienceの頭文字を取ったもので、どこまでも消費者中心の製品開発をしなければならないという考え方だ。難しい理系の話をするより、わかりやすい言葉で伝えられるイノベーションこそが本当に意味のあるイノベーション。市場投入するときも、ポイントをわかりやすく表現することが大切だ。
──ノートの企画から市場投入までにかかった時間は。
消費者ニーズとのギャップを理解してコンセプト段階の企画を進めたのが2~3年前。実際の製品にするのには1年かかっていない。