つまり、首都圏の物件価格の年間下落率は平均2.0%なので、平均的な物件を購入したら、つねに物件価格の下落率(2.0%)が元本の返済率(1.5%)を上回ることになる。
ということは、売っても住宅ローンを満額返済できないということだ。こうなると、銀行は物件を担保に取っているので、売却には同意しない。同意するには、不足している元本を現金で返済してもらうことが条件になる。0.5%の逆ザヤが10年続いて、不足額が物件価格1億円の5%なら、500万円を用意しなければならない。
50年ローンの場合、月の返済額は7万円程安くなるが、相場が上昇しないと売るに売れない状況が続くことになる。これはバブル崩壊からの相場下落局面のときと同じ現象になる。自宅を売れない状況で困るのが、離婚や転勤などの事態だ。
特に、離婚は悲惨だ。一緒に住めないから売却したいのだが、その際には多額の現金が必要になってしまう。「持ち家よりも賃貸派」の論客はこのパターンにはまって現金を支払った経験を持つケースが少なくない。
それだけではない。50年ローンは35年ローンと金利が同じで、月返済額7万円減るので、元本の減り方も毎月7万円減るので、なかなか元本が減らない。だからこそ、50年ローンは人生においてリスクが高すぎると私は考えていた。
50年ローンが選択肢となる人の条件
その一方で、2013年の金融緩和以降、資産インフレが継続している。特に、港区などの都心では相場が下がらない限り、マンションの築年での値下がりはないことは証明できる。
資産価格が安定しているならば、「返済は金利だけで十分なのではないか」と考えていた時期もあった。こうした前提なら、元本はまったく減っていなくても、数年後に資産インフレが20%起きていれば、売却時には20%の含み益がキャッシュとして入ってくる。これで十分ではないか、と。
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