ウォール街とオバマ大統領、言葉は一見手厳しいが具体的な行動は手ぬるい
インサイダー取引には、マッキンゼーの元グローバルチーフ、ラジャト・グプタがかかわっている。グプタはGSの取締役会で得た情報をヘッジファンドの億万長者、ラジ・ラジャラトナムに流したと訴えられている。ラジャラトナムは、現在インサイダー取引で11年の刑に服役中だ。
また2月29日、デラウェア州のレオ・ストライン判事は、キンダー・モルガン(パイプラインと貯蔵の会社)がエル・パソ(天然ガスの巨大企業)を380億ドルで買収した件でGSを痛烈に非難した。
GSは、キンダー・モルガンに40億ドルを投資して株式の19%を所有、2名の取締役を送り込んでおり、買収額を抑えることが利益となる。
一方GSは、買収される側のエル・パソからもアドバイザー業務を請け負っており、高い金額を払う買い手を見つける義務を負っていた。
こうした利益相反は、サブプライム問題でも強く非難された。GSはインチキ証券を顧客に販売する一方で、その証券が値下がりする予測に基づいた自己売買を行っていた。
GS元幹部のグレッグ・スミスはニューヨーク・タイムズに対し、「経営会議では、どうしたら顧客を救えるかという問題に1分間すら割いたことはない。議論したのは、どうしたら顧客からカネを最大限むしり取れるかだけだった」と述べた。
最近までオバマ政権は、ウォール街に対し、静観姿勢を取ってきた。金融業界との不協和音や、ウォール街のさらなる弱体化による景気回復への悪影響を恐れたからだ。
代りにオバマは、ドッド・フランク法の実施のみに熱心だった。同法の目的は、金融機関の過剰なリスクテイクとレバレッジを抑制し、自己勘定売買を制限(ボルカールール)、制御不能なデリバティブ市場を規制して顧客保護を強化することにある。