一人っ子政策廃止10年の中国、育児手当・幼稚園無償化で《出産容認から"支援"に舵》。"産み控え"の氷河期世代、日本と異なる事情とは?

中国が一人っ子政策廃止を宣言して10年。出生数は増えるどころか10年で半分に減った。2人目、3人目どころか1人も産みたくない若者に厳しい現実を突きつけられた政府は、7月末に育児手当の導入と幼稚園の無償化を発表、無痛分娩や不妊治療の支援にも目を向け始めた。
中国版「異次元の少子化対策」の背景には、ただでさえ出産意欲の低い若者が、雇用環境の悪化で産み控えを加速させるとの危機感がある。
出産容認から支援に転換
中国政府は7月末、子どもが3歳になるまで年間3600元(約7万4000円)の育児手当を導入すると発表した。併せて幼稚園の保育料1年分を無償化し、無痛分娩と不妊治療への助成も進める。
日本人にとっては目新しさのない少子化・育児支援政策に見えるだろうが、中国はほんの10年前まで、子どもも乗る路線バスの車内に「日帰り中絶手術」の広告が掲示されるような国だった。
手術を終えたワンピース姿の若い女性が、迎えに来た男性と手をつないで「手術翌日に仕事に戻れます」「誰にも知られない」と笑顔で語りかける動画広告が公共の場で流れていた時代を知っていると、政府の“変節ぶり”に驚くばかりだ。事態はそれほど深刻なのだろう。
中国は1970年代に一人っ子政策を導入し、40年以上にわたって産児制限を続けていた。しかし将来の労働力不足が懸念されるようになり、2015年末に同政策を撤廃。この時、政府や専門家らは政策転換によって年間の出生数が当時の1600万人台から約2000万人に増えると楽観していた。
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