日本はサンマが実質"獲り放題"になっている…「海水温上昇」「外国漁船」「暖水塊」よりも根本的な不漁原因

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日本の昨年(2024年)のサンマ漁獲実績は3.9万トンです。今年(2025年)の枠は、公海と日本の排他的経済水域(EEZ)内合わせて約8万トンの漁獲枠となっています。これは外交上よくできています。

サンマは公海から日本のEEZ内に来遊してきます。公海の枠が上限に達して獲れなくなれば、魚群の一部は日本のEEZ内に来遊してくるので、その魚群を漁獲できれば以前のように日帰りでサンマが水揚げされることもできるようになります。

一時的に資源が回復しても、再び獲れなくなる

しかし、台湾・中国が獲らなくなった分を日本が獲ってしまえば資源回復は進まず、国際的には「日本が資源を悪化させている」と見なされる危険もあります。また、漁獲枠配分に他国から異論が出たり、公海での漁獲枠消化量が低く報告されて資源管理が再び機能しなくなったりする可能性もあります。台湾や中国が公海でのサンマ漁船を建造する前に手を打っておけばよかったのですが、すでに建造されてしまっています。

各国とも真剣な漁獲枠交渉において容易に引き下がることはありません。本来我が国は、中長期的視点に立ちサンマの短期的な獲りすぎを防がねばなりません。

一時的に資源が回復しても、獲りすぎて元の木阿弥になって獲れなくなってしまった例はたくさんあります。北海道で一時的に増えたニシン、秋田のハタハタ、宮城のマダラ、太平洋のマサバなど。サンマもせっかく一時的によくなったように見える資源を持続的にできるかどうかは、資源管理次第なのです。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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