「鉄道の町」どう活性化?高校生たちの斬新な発想 宮城県美里町、JR東は通勤ライナーで利便性向上
美里町の拠点駅はJR東日本の小牛田駅である。1890年の東北本線岩切―一関間の開通と同時に設置された由緒ある駅だ。1912年には石巻線、1913年には陸羽東線が開業し、小牛田は3路線が乗り入れる鉄道の要衝となった。
多くの列車が行き交うことで鉄道関連の雇用が生まれ、鉄道職員やその家族が小牛田に移り住むようになった。1982年の東北新幹線開業以降は鉄道の要衝としての賑わいは薄れている。それでも多くの路線が乗り入れる小牛田は、県内において仙台と並ぶ鉄道の要衝であることは変わらない。

美里町産業振興課の小南友里主幹は「美里町の強みは3路線が交差する鉄道の結節点であること、鉄道の町として培われた豊かな歴史と文化、そして地域住民に根付く鉄道への愛着の3点だ」と話す。「この強みを生かして賑わい減少や若年層流出などの課題を克服したい」。
鉄道の町として美里町のブランド力が全国に知れ渡れば観光客が増え、地域で観光事業にかかわる雇用が増える。地域産品の販売も拡大する。そして、鉄道が交通インフラとして再評価されればダイヤが改善され、通勤・通学手段としての利便性が向上する。それによって定住人口が増える。美里町の鉄道にかける期待は大きい。
「異例」の通勤特急が登場
これまでも町内では鉄道を活用したイベントがいくつも行われてきた。小牛田駅を拠点に車両展示やミニSLに試乗できる「駅フェス」が毎年開催されているほか、昨年は有名大学の鉄道研究会が集結する「てっけんサミット」も開催された。陸羽東線の新庄と小牛田を結ぶ蒸気機関車「SL湯けむり号」も過去に何度か運行している。豪華観光列車「トランスイート四季島」が停車したこともある。
そして2025年夏。まずJR東日本が動いた。7月4日から東北本線仙台―小牛田・石越間で特急「イブニングウェイ」の運行が始まった。毎週金曜日の夜、仙台から小牛田方面に向かう下り列車を2本運行する。使用車両は快速「湯けむり号」としても使われている、座席がリクライニングシートのキハ110系2両編成。仙台―小牛田間の所要時間は34分で通常よりも10分程度短縮した。SLのような観光列車ではなく、通勤客需要の取り込みを狙った地元向けの施策である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら