夏のインターン真っ盛り、そんな今こそ考えたい「就活は一斉」が象徴する日本型雇用の"大きすぎる弊害"

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「学歴」の差とは、大学卒と高校卒の差、そして卒業した大学名の違いのことだ。それに対して「学力」の差とは、目の前にある問題を解決できるかできないかという、能力の差である。

前述の内容をこの言葉を使って言えば、日本企業は採用にあたって「『学力』より『学歴』を重視する」。一方、アメリカの企業は「『学歴』より『学力』を重視する」ということになる。

学歴重視と日本型雇用の深い関係  

日本で「学歴」が重視され、「学力」が重視されないのは、先に述べた日本型雇用体制と密接な関係がある。

転職が頻繁に行われるような社会であれば、転職市場において、仕事をどれだけできるかという能力が判定されることになるだろう。その能力は一生を通じて変化していくので、「学歴」という情報はそれほどの重要性を持たない。それよりは、最近の状況でどれだけの仕事をしたかというような情報が重視されるだろう。

ところが、すでに述べたように、日本企業の多くが終身雇用的な雇用体制をとっている。かつてに比べればかなり変わってきたものの、企業間の移動が少ないという状況に大きな変化はない。卒業時に就職した企業にできるだけ長期にわたって勤めることを望んでいる従業員は、今なお一定以上の割合で存在する。

このような雇用体制の下で、企業が採用時にその人の本当の職務遂行能力を把握するのは難しい。したがって、その代理変数として「学歴」に頼るのだ。

日米のシステムのどちらが優れているかは、経済環境に依存する。1980年代以前の世界においては、日本型のシステムが優れた成果を出した。ところが2000年代頃以降から、このシステムでは世界の急速な変化に対応できなくなった。

経済環境が大きく変転する中でOJTに依存していると、その会社がこれまで行ってきたビジネスに縛られる。そこから脱却して、新しい分野を切り開いていくことは難しい。日本が世界経済の大きな変化に対応できなかった基本的な理由は、この点にあった。

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