【産業天気図・工作機械】外需拡大続き、07年受注は連続過去最高更新の勢い。

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今07年度の工作機械業界は、前06年度と同じ強基調が続きそうだ。内需の主役である自動車産業の設備投資動向など多少の不透明要因はあるものの、上期・下期とも前回特集の「快晴」予想を維持する。
 前07年3月期は大手のオークマ<6103.東証>や森精機製作所<6141.東証>、牧野フライス製作所<6135.東証>をはじめ、大幅増収増益決算が相次いだ。ところが、今08年3月期業績について、主要各社の見通しは一様に慎重。前期2割増収・5割営業増益となったオークマと森精機は売上高・営業利益とも1割増にペースダウン。前期1割増収・4割営業増益だった牧野は横ばい程度に鈍化するという。中堅各社に至っては、減収減益予想のほうが目立つ。
 彼らの言い分は「前期まで好調が4年も続いた反動減」という“経験則”が多数派。加えて、国内自動車産業の設備投資が弱含んでいることや、米国景気の減速、円高などもリスク要因に掲げる。実際、中堅企業の多くは国内自動車産業への依存度が高く、06年を通じて右肩下がりだった自動車関連についての不透明感が、まだぬぐい切れないようだ。
 業界団体・日本工作機械工業会(日工会)の調べによると、07年1~5月累計受注額6473億円のうち、内需3060億円は確かに前年同期比1.7%減と「軟調」。ただ、中村健一・日工会会長に言わせれば「依然、前年並みの高水準」を保っており、「反動減」の現象はまだ見当たらない。一方、外需3412億円は欧州、アジアを牽引役に実に20.9%増で、過去最高だった昨年を上回るハイペースで推移している。かつて内需依存度が高かった工作機械受注も近年は内外需がほぼ半々となり、内需が足踏んでも、外需で伸びる構造ができつつある。事実、内外需を合計した上記の累計受注額6473億円は9.0%増にも達する。
 また、心配された米国景気は利上げが論じられるほどの拡大傾向。世界を見渡しても急激な円高要因は特段ない。加えて、国内自動車関連が日工会の予想通り今下期から回復するなら、受注総額(06年暦年実績1兆4370億円)は同会の見通し「1兆4000億円台」を軽く超え、1兆5000億円台に達する可能性が高い。
 工作機械産業は設備投資動向によって業績が激しく振幅する典型的な業種で、「受注がなくなるときは、いつも突然」(中堅メーカー幹部)という性格を持っている。が、以上を勘案する限り、各社の慎重予想は足下の実態と幾分乖離しており、「内需の軟調を好調な外需で補う」という図式は現状、今期も続くと見るべきだろう。15日発売の『会社四季報』夏号も、特殊事情のある一部の会社を除き、多くの工作機械メーカーについて慎重な会社計画よりも強含みの予想を立てている。
【内田史信記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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