【データ検証】「外国人による治安悪化」は本当か?→インバウンドは明確に無関係…だが、労働者の属性次第では犯罪増加も

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重要なのは、これらのデータが「外国人の犯罪率が高い」や「日本人の犯罪率が低い」などという単純かつ表面的な結論を示しているのではなく、「犯罪率が高くなりやすい属性を持つ人々が、外国人労働者の中に相対的に多く含まれている」という構造を示唆している点です。

高齢化が進んでいる日本では、その分だけ犯罪率が低下することになります。極論すれば、もし日本人の若年男性が人口に占める割合が高まれば、同じように全体の犯罪率は上昇する可能性が高いのです。逆に、日本人の犯罪率が減っているのは、高齢化が進むことで日本人の若い人の比率が下がっているためでもあると言えます。

安易な労働力の受け入れで治安が悪化する可能性はある

人口減少が進む日本において、現在の産業構造を維持しようとすれば、外国人労働者の受け入れ拡大は避けられないという結論になります。その中で、労働力として若年男性を多く受け入れるのであれば、それに伴い一定程度、治安への影響が生じる可能性は認識しておく必要があります。

一方で、現在の産業構造を維持すること自体は、絶対に必要なことではありません。例えば、日本人の女性活躍を一層推進することができれば、その分、若年男性の外国人労働者を増やす必要性は低下します。

同様に、国全体の生産性を高めることによっても、労働力の需要は抑制され、外国人労働者を増やす必要性を減らすことができます。

私は以前から、「現在の企業数をそのまま維持しようとすれば、外国人労働者の増加は不可避である」と主張する一方で、人口が減少すれば、学校の数が減るのと同じように、企業の数も減少するのが自然の摂理であることは、子供でも理解できることだと主張してきました。

その道理を無視して現在の企業数を維持したいのであれば、外国人労働者を増やす以外に道はありません。犯罪の増加も避けられないでしょう。

私の主張は、「資源の集約、すなわち企業数の自然な減少を許容すれば、外国人労働者の需要は抑制できる」というものです。しかし、この主張を「中小企業の淘汰論だ」と曲解し、悪質なデマを流布して騒ぎ立てる既得権益層が存在します。

「企業数を維持するために外国人労働者を増やしておきながら、その結果として生じる犯罪の増加を批判する」という態度は、自己矛盾も甚だしく、論理性に欠けると言わざるを得ません。厳しい言い方をすれば、それは自業自得です。

逆に、「犯罪が増える懸念があるから外国人労働者は受け入れるべきではない」と主張するのであれば、その当然の帰結として生じる「企業数の減少」を許容しなくてはなりません。

結局のところ、犯罪は国籍を問わず、等しく犯罪です。法の下の平等に基づき、警察が粛々と対応すべき問題であり、そこに「外国人だから」といった議論が介在する余地はありません。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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