【データ検証】「外国人による治安悪化」は本当か?→インバウンドは明確に無関係…だが、労働者の属性次第では犯罪増加も

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もちろん、在留外国人の総数が増えれば、それに伴い犯罪の絶対数も増加する可能性があります。しかし、統計学的には、母数が小さいほど比率が変動しやすくなるため、在留外国人の総数が増加するにつれて、人口に対する検挙人員の比率はむしろ安定、あるいは低下することも考えられます。

そして、実際にそのようになっています。検挙人員数がピークだった2005年には、在留外国人数は201万人でした。2023年には、在留外国人数は2005年の1.7倍に増えているのに、外国人検挙人員数は34.2%も減っています。

在留外国人数に占める検挙人員の比率は、1982年の1.27%をピークに長期的な減少傾向にあり、2023年には0.29%まで低下しました。これは、日本人の比率である0.22%をわずかに上回る水準です。

インバウンドと検挙数に相関は見られない

インターネット上では、インバウンド(訪日外国人旅行者)の増加が治安を悪化させているとの主張が少なくありませんが、これは大きな誤解に基づいています。

警察庁が公表している統計は、日本に居住する外国人(在日・来日外国人)を対象としたものであり、短期滞在者であるインバウンドは母数に含まれていません。よって、警察庁のデータを出して「インバウンドが増えたから、検挙数が増えた」と主張するのは、明確な飛躍です。

しかも、データを見ても明らかなように、インバウンドが本格的に増加し始めた2012年以降も、外国人による刑法犯の検挙人員はほぼ横ばいで推移しています。

事実、インバウンドが24万5862人にまで激減した2021年でも外国人検挙人員の総数はほとんど変わらず、逆にインバウンドがその102倍に急増した2023年においても、検挙人員は3.4%の微増に留まりました。

インバウンド政策は1人当たり25万円を消費する富裕層や中間層が中心であり、そもそも刑法犯罪を犯しやすい属性とは考えにくいのです。

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