倒閣運動"沸騰"でも辞めない石破首相の《胸の内》、泰然自若として続投表明を繰り返すのは「天の声にも変な声がある」から?
石破首相はこうした声を“天の声”としているのかもしれない。あるいは、自署『保守政治家』で述べた「天命」だと信じている可能性もある。
関税交渉の日米合意をめぐって24日、石破首相は「国内の事業者、関連産業で働いている方々の不安を払拭するように、引き続き全力を尽くしたい」と、自らが日米合意の確実な実施を先導していく決意を述べた。だが、それは果てしない作業になりかねない。
まず、今回の関税交渉には合意文書がない。また、日米両政府は25日までに合意内容を公表したが、実は「8月1日」とされた発動日についてさえも決まっていなかった。
「8月4日に衆院予算委員会で質問することになっているが、合意文書もないということなら、いったい何を基にして質問したらいいのか」。7月25日午後に開かれた立憲民主党の日米通商問題対策本部のヒアリングで、山井和則衆院議員はこう述べた。大島敦衆院議員も「合意内容はトランプ大統領の気分次第で変わるのか」と疑問を呈した。
実際、22日にアメリカ・ホワイトハウスで行われた交渉では、ドナルド・トランプ大統領が手にした「Japan Invest America」と題されたパネルには日本側からアメリカへの投資枠が「400B(4000億ドル)」と記されていたが、トランプ大統領は「500B(5000億ドル)」と上書きし、さらに50B(500億ドル)を追加した。そして、投資についての利益配分については当初の折半から、アメリカが90%・日本が10%に変えられた。
これについて、交渉に当たった赤澤亮正経済再生担当大臣は26日にテレビ番組に出演して「80兆円(5500億ドル)というが、実際の投資はその1、2%にすぎない。その利益配分を50%から10%に引き下げたことで日本が失う利益は、2桁億ではないけれど数百億円の下のほうだと思う」と説明。交渉で得た関税引き下げによる損失回避に比べると、マイナスの影響は微々たるものであることを強調した。
石破首相は“天の声”をどう解するのか
確かに、トランプ政権には石破政権とWIN-WINの関係を構築しようという姿勢が見える。しかし日本の国内事情を理解していれば、その判断は参院選の最中に発表できたのではなかったか。相互関税が10ポイント下げられるという事実は、苦戦の自民党にいくらか有利に働いたはずだ。
また、25日夜に官邸前で行われた「石破首相辞めないで」運動についても、参加者のうち、どのくらいが参院選で石破政権が存続するように投票したのか。いずれも「“後の祭り”にはどう対処しても、どうしようもない」という印象が強く残る。
あるいは、これこそが「天の意思」なのか。だとしたら、福田元首相が1978年の総裁選予備選後に述べたとおり、「天の声にも変な声がたまにはある」ということになるだろう。そうした“天の声”を、石破首相はどのように解するのか。それも政治家の力量といえるのかもしれない。
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