パート労働者への厚生年金適用拡大、中途半端な導入より被用者年金一元化を

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職域加算は廃止せよ

また、この改革は年金財政にもマイナスに働くとみられる。370万人の半分近くを占めるパートの主婦は40歳代以上が多い。短期的には厚生年金加入者が増え、保険料収入も増えるが、パート主婦の多くはそう遠くない将来、年金をもらう側になる。その結果、いずれは支給額が保険料収入を上回るだろう。

非正規の処遇は改善せず、第3号被保険者もあまり減らない。年金財政も悪化する。こんなメリットの少ない制度改革なら、見送るべきだ。

一方、被用者年金の一元化は、まだ内容が固まっていない。だが、議論は歪んだ方向に向かっている。

公務員の共済年金は、厚生年金と比べて、保険料は安く給付水準は高い。しかも、「職域加算」という独自の上乗せ部分もある。官民格差の象徴とされる部分だ。

政府・民主党は、もともと職域加算の廃止を考えていたが、一部議員の反対から先送りに傾きつつある。「民間にも3階部分の企業年金があり、職域加算はそれに見合うもので公務員優遇ではない」というのがその理由だ。だがこれは、明らかにおかしい。企業年金は企業や社員が保険料を負担しているのに対し、職域加算には税金が投入されているからだ。一元化に当たり職域加算は即刻廃止するのがスジだ。

そのうえで、保険料水準と給付水準を厚生年金に合わせるべきだ。また、厚生年金より豊富な共済年金の積立金は、そのまま手をつけずに統合すればいい。それが、一元化の本来あるべき姿である。

政府・民主党は、パートへの厚生年金適用拡大を中途半端に進めるのではなく、むしろ、望ましい形での被用者年金一元化を優先すべきだ。

(シニアライター:柿沼茂喜 =週刊東洋経済2012年3月31日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:梅谷秀司

 

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