原価率50%近いの商品も! 銀座ウエストが78年愛される「不変の哲学」と「驚異の素材主義」の秘密
経営理念を聞くと、「とにかくいいものを作り続けて、信用を築くこと」との答えが返ってきた。まさに友一氏の理念を受け継いでいる。これだけ規模を広げても、工房では200人の職人が、昔ながらの製法で手作りでお菓子を作り続けているのだという。
「何よりのこだわりは素材です。とくに、味はバターで決まりますから、並々ならぬこだわりがありますね」と龍一氏は言う。2種のバターを商品によって使い分けているそうだ。
素材へのこだわりと相当高い原価率
リーフパイには、穀物で育てた、東北産のくせのない全酪のバター。そのほかのお菓子には、北海道の干し草を与えて育てる森永乳業のバターを使用する。リーフパイにはバター臭がつきすぎると、くどくなる、逆に、ほかのお菓子にはしっかりバターの香りを利かせたいというのが、その理由である。
PX(米軍基地内の売店)で食材を仕入れていたころから、とにかく一番いい素材をという考え方を80年近く受け継いでいるわけだ。
しかしながら、原材料にこだわると、当然ながら原価率が上がる。一部の生ケーキは40~50%近くに達するという。ドライケーキ類は20~30%で収まるそうで、それらを上手に組み合わせることでバランスをとっているわけだ。ただ、それにしても飲食店の原価率が3割のラインを考えると、銀座ウエストのそれは相当高い。
現在も変わらず、屋台骨を支えているのは、いわゆるドライケーキだ。それを店舗、百貨店、eコマースを通じて多角的に販売していくことで、健全な経営が成り立っているのである。それも、意図してその道を歩んだわけではなく、その時々の困難を乗り切るために出したアイデアが、結果的には店を守ることになっていったのだ。
商品全体の利益率を平均すると、約1割だという。意外な気がするではないか。たった1割の利益を積み重ねて、80年という歴史をつないできたのだとは――。長い歴史の中にはいろいろな困難があったが、それらを勝機に変えて、今日まで80年余り、「そんじょそこらにはない」一流店として生き残ってきたのである。
ウエストの応接室には「社是=真摯」と書かれた額が飾ってある。よい品物をよいサービスでお客様に提供し、日々の商いをコツコツと続けていくことで、世間の信頼を一歩ずつ積み重ねていくという、当たり前のことがいかに大切で難しいかということを記したものだそうだ。先代の友一氏の時代にはさまざまなことがあり、それから学んだことを、当代の龍一氏が今も大切に守り続けているのである。
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