今回、ファロというポルトガルのほぼ南端のリゾートで乗った、ヨーロッパ向け市販車(ドイツナンバーがついていた)では、最大操舵角が200度になっていた。
「当初のプロトタイプからちょっと“丸めた”のは、150度だと慣れが必要ではないか、という声があったからです」
ファロで出合った開発部所属の寺田寧之氏は、背景を説明してくれた。
ステアバイワイヤに違和感はないか?
RZ550e F SPORTの操縦桿(のようなステアリングホイール)を握って路上に出る。
このとき、「ははぁ」と思ったことは、寺田氏の言葉どおりの操縦感覚だ。
記憶にあったシャープな操縦性でなく、たしかに腕を動かす量が多い。ただし、別の言い方をすると、違和感がまったくない。
ここがおもしろい点だった。航空機の操縦桿のようなステアリングホイールだが、握って運転しているドライバーは、普通の円形のステアリングホイールを操舵している感覚なのだ。

助手席や後席からドライバーの様子を眺めているほうが、むしろ違和感がある。ドライバーがぐるぐるとステアリングホイールを回していない。
普通、ステアリングホイールの“ロックからロックまで”は、3回転ほど。だが、ステアバイワイヤシステムでは、小さな角を曲がるときですら90度まで回さない。つまり4分の1回転だ。
プロトタイプのほうがシャープでおもしろかったという当初の感想はともかく、ドライバーと傍観者の意識の大きなズレこそ、レクサスのエンジニアが、ステアバイワイヤシステムを上手に仕上げたことの証左なんだと思う。
白壁の建物が並ぶファロの市街地、緑の中のワインディングロード、さらにハイウェイ。さまざまな道を走ったが、走行で違和感を覚えることはなかった。

小さなカーブが連続する道では、腕を軽く左右に振るような感覚で気持ちよく曲がっていくし、高速では進路がブレることなく、すぐれた直進性を発揮した。
パワフルさが自慢のRZ550e F SPORTだけに、少しアクセルペダルを踏み込んだだけで、静かに、しかし力強い加速をみせる。
意識していないと、すぐに制限速度を超過しそうになるほどだ。
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