参院選"首都決戦"最大の波乱要因、国民民主党から捨てられた山尾志桜里氏が挑む異例ずくめ「ドブ板選挙」の勝算

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そもそも山尾氏は、民進党の衆院議員だった10年前、衆院予算委員会で当時の安倍晋三首相(故人)に対し、「保育園落ちた、日本死ね」と悲嘆するWeb上の声をぶつけ、一気に「野党の女性議員の星」となり、党幹部に上り詰めた“異才の女傑”だ。

ただ、周囲からは「お高くとまった美魔女(35歳以上の年齢を感じさせないほど若々しく美しい女性)」と受け止められた。その印象が中央政界での反発にもつながっていたのは否定できない。 

公認内定取り消しにもつながったとされる国民民主党からの出馬会見でも、焦点だった「不倫問題」に関して頑なにも映った説明ぶりが、「相変わらずの山尾氏」という批判とともにSNSでの炎上を招いたのは事実だ。

一方、3日の第一声での立ち居振る舞いを見る限り、「“ズタボロ”になってドブ板で訴える女性候補になりきっていた」(取材記者)ことで、これまでの悪印象を払拭した格好ではある。

とはいえ、こうした山尾氏の“大変身”にもかかわらず、現状では選挙戦の厳しさは変わりそうもない。選挙関係者の間では「今回は改選数が1つ増えて7議席となり、当選ラインが下がるが、それでも50万票は必要。徒手空拳の無所属では、同情票だけで当選圏内に入るのは極めて厳しい」(別の選挙アナリスト)との見方が支配的だ。

「30万票の限界」を突破できるか

しかし、大乱戦が予想される今回の「首都決戦」における各候補の選挙戦略を分析すると、「山尾氏の“意地の出馬”が各有力候補の戦略を揺さぶっている」(同)との指摘も出始めている。

過去の東京都選挙区の選挙結果を振り返ると、山尾氏のような知名度のある元議員が出馬した場合でも「30万票が限界」というのが常識だった。しかし、山尾氏のように、タブー視されてきた「皇室と憲法」を掲げて挑んだ有力候補は、これまではいなかった。だからこそ、NHKや民放各局の多くが山尾氏の第一声の映像を取材・放映したわけだ。

「今後も同様の状況が続き、各メディアの東京都選挙区の情勢調査で山尾氏の支持拡大が目立てば、これまでの『30万票』という限界を突破して、当選圏に迫る可能性も出てくる」(政治ジャーナリスト)との見方が広がっている。

ほかの政治家にはない「異例ずくめの曲折」を乗り越えて再起を期す山尾氏。開票日の7月20日夜に歓喜の涙を流すのか、落胆して去るのかは、まだ誰もわからないのが実情だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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