宗教2世の「きょうだい児」が死に物狂いに見出した"活路"。《カルト宗教、DV父、母の自殺未遂…》壮絶な日々でつかみ取った慶應大への進学

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そして迎えた大学入試。センター試験(当時)の成績は取れたため、東大に出願、しかし結果は不合格。親に「浪人させてほしい」と頼むと、案外すんなりと許可された。

だが、お金の負担はそれほど望めなかった。県立トップ校のこの学校の卒業生を受け入れて奨学金をくれる東京の予備校があったため、そこに通うことを決めた。こうしてまずは実家を出ることができた。

「大手の予備校と違って、ほんと、建物もなんかこう古い感じのとこでした」

予備校で出会った友人たちの話を聞いてやっと早慶も悪い大学ではないと思えるようになったという。

「予備校でグッと力が伸びた感じです」

国立狙いの6教科から、私立対策の3教科に絞り入試を迎えた。

きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録
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しかし、これだけ荒れている家庭環境で金銭的にもゆとりのない状況の中、なぜ親は大学進学を許してくれたのか。

「両親は2人とも中卒で、大変な思いをしたので、学歴に対してのコンプレックスも強い人間だったんですよ。

田舎の昭和のお母さんって、パートと言えばレジ打ちのイメージがあったので、ある日、母に『お母さんレジ打ちやんないの?』と聞いたら『電柱に貼ってあるチラシ見てみなさい。みんな高卒って書いてあるから! 私みたいな中卒はお金を扱わせてもらえないの!』と、逆ギレされました。

それから自分でも学歴について調べるようになって、学歴って怖!っと思いました」

小学校もろくに行けなかった葵さんだが、両親に参考書がほしいと言えば「老後の面倒を見ろよ」といいながらお金を出してくれていたという。

 時々、自分ができなかったことを子どもでリベンジしようとする親がいるが、葵さんの両親も学歴に対するコンプレックスを娘によって払拭しようとしていたのかもしれない。

浪人して慶應に合格

2回目の大学受験、葵さんは慶應義塾大学に合格、今は東京で働いている。東京に出てからも何度か家のいざこざに巻き込まれそうになったが、社会人となった今は家族とは距離を置いて暮らしている。

葵さんはマンガエッセイの最後にこう書いている。

「この本を読んでくれたきょうだい児の皆さんには、自分自身の底力を信じ、確固たる信念に変えて、堂々と自分の道を生きてほしい」

東大早慶と言えば、恵まれた家庭の子どもが通う印象が強い昨今だが、さまざまな格差を乗り越えてど根性で這い上がる子どもたちがいることを忘れてはならない。

【この記事の画像】壮絶な子ども時代を漫画で描いた(5枚)
宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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