台湾・国民党が総統選候補者をすげ替えた 前代未聞の処置でも支持率上昇は期待薄
対する最大野党の民主進歩党(民進党)の候補者は蔡英文主席(59)。総統選で初の女性同士の対決になる構図だったが、洪氏が中国との統一を容認するかのような発言を連発。これに危機感を覚えた国民党内部が、立候補の辞退を求めたものの、洪氏が拒否していた。
「足並みをそろえ、再出発すべきだ」と、朱氏は臨時党大会で表明した。だが、最新の世論調査での支持率は、蔡氏48%に対し朱氏は29%。洪氏の支持率は24%だったので支持率は上昇したといえるが、いまだに大きく水をあけられている。今回の混乱で、洪氏支持派を中心に不満がくすぶる。朱氏に替わったとはいえ、今後の支持が高まるかどうかは不透明だ。
来年1月の総統選挙の争点は、中国との関係(両岸関係)をどうするか、だ。現在の馬英九政権を含め、国民党側は「台湾と中国は不可分」という「92年コンセンサス」を基調としてきた。同時に、2010年に締結された両岸経済枠組み協定(ECFA)を深化させ、経済的に最も関係が深い中国との交流を進めてきた。
争点は対中国政策、民進党にも弱み
だが2014年、ECFAのうちサービス貿易協定の審議過程や内容に不満を持つ学生を中心とする市民が「中国に吸収される」と反発、同年3~4月に発生した「ひまわり学生運動」で、台湾の政治状況が変わり始めている。
10月16日、台湾の学術研究機関である中央研究院社会学研究所が発表した調査によれば、両岸政策、すなわち対中国政策への信任度を2013年と15年と比較したところ、国民党への支持率が49%から34%へと下落。一方で、民進党の両岸政策への支持率は、34%から46%へと上昇している。また、ひまわり学生運動以降、浮動票の意識が大きく変わっており、既存政党への不満の行く先にも不透明感が漂っている。
民進党の蔡英文候補は、両岸政策について「現状維持」をことさらアピールする戦略だ。だが、民進党は台湾独立を党是とし、両岸関係については明確な政策を打ち出したことはない。「われわれは中国ではない」という「台湾アイデンティティ」が現在の台湾の主流であることは間違いないが、経済関係では中国の存在を気にしなければならない。「楽勝」ムードの民進党だが、両岸関係をめぐって朱氏と蔡氏がどのような舌戦を繰り広げるかによって、総統選の行方も大きく替わってくるのは間違いない。
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