「本を出しませんか?」→「なぜか1000万円も自分で払う羽目に…」 中小企業の社長がハマる「自費出版」の"落とし穴"
テレビの世界にも、じつは自費出版のような出演方法があります。つまり、自分でお金を出して番組枠を買い、番組に出してもらう方法です。
とは言っても、お金で番組枠を公式に売っているのは、独立局です。独立局とは、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビという5大民間放送局の系列に属していない放送局のことです。
テレビ局のビジネスは、不動産業に似ているところがあります。三菱地所や三井不動産のような一流のデベロッパーは、地域を丸ごと再開発することで、土地の価値そのものを高めようとします。東京の丸の内や日本橋などの開発は、その好例です。
テレビ局も同様に、高視聴率の人気番組を生み出すことで、自社の放送枠の価値を高め、広告単価を上げたり、映画化やネット配信収入の増大を狙ったりするのです。また自社で人気番組を生み出そうとすることで、人材の育成にもつながります。
ですが独立局には、そのような長期的な収益を考える余裕がありません。それゆえ、放送時間という「土地」の付加価値を高める“再開発”の努力をすることなく「更地」のままでPR会社に販売するのです。
枠を買ったPR会社は、それなりの知名度があるフリーアナウンサーを起用して「○○アナ、□□社長に聞く!」といった報道「風」の番組を企画し、中小企業に売り込みます。
だれも聞いたことがないような番組なのに、出演料は1枠300万円と高額です。中小企業から得る出演料から、独立局に支払う放送枠の代金、さらに番組制作費、営業費用などを差し引いた額が、PR会社の収益となります。
最近はテレビの独立局だけではなく、YouTubeの人気チャンネルも同じような手法に手を染めています。日本トップクラスのインフルエンサー、あるいは「報道エンターテインメント」とでも呼ぶべきチャンネルでは、1回の出演料として600万円を取っています。こちらはPR会社を介さずに販売しているので、経費以外はすべて収益となるのでしょう。
価値ある番組かどうかの見分け方
その番組がちゃんとした放送局のものか、それとも有料枠のものかどうかを見破るのは、意外と簡単です。有料枠の番組サイトは、そのテレビ局のサイトとまったく関係のないURLとなっています。独立局ではなく、その枠を購入したPR会社が運営しているサイトだからです。
もうひとつの見破るポイントは、出演した企業が番組全編を自社サイトなどで公開しているかどうかです。
独立局を含むどのテレビ局も、原則としてTVerか自社の関連サイト以外での番組利用を認めていません。そのため、出演企業のサイトで全編の動画が公開されている時点でおかしいとわかるのです。また、番組概要欄に出演企業の広告が入っていることもあります。
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