【産業天気図・通信業】KDDI、ソフトバンクが好調。新規事業者参入等で競争激化し後半「曇り」に

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昨年10月に導入された番号持ち運び制度(MNP)は業界の期待ほどのインパクトはなかったものの、着実に地殻変動を起こしつつある。顕著なのは、業界シェア約55%を握るNTTドコモ<9437.東証>の苦戦が止まらず、2位のKDDI<9433.東証>、ソフトバンク<9984.東証>の快進撃が続く流れ。NTTグループにとってドコモは最大の収益源であるため、07年3月期はドコモが営業減益に転落したのに伴い、NTT(日本電信電話)<9432.東証>の業績低迷も続いた。
 勢いに乗るKDDIは、この4月、2010年度に売上高4兆円、営業利益6000億円を目指す中期経営目標をブチ上げた。この達成には携帯電話事業が好調を維持することはもちろん、年間500億円以上赤字の固定通信事業の黒字化も焦点になる。一方、ソフトバンクは昨年10月から携帯電話事業に割賦販売制度を取り入れた関係で、損益計算書上に現れる販売奨励金が激減。ソフトバンク端末の価格競争も沈静化し、劇的に利益率が改善しつつある。
 ソフトバンク端末の価格競争が減っていることから、ソフトバンクが主力の代理店各社の業績も急改善している。ベルパーク<9441.JQ>などがその代表格だ。
 ”孝行息子”だったドコモの苦戦に悩むNTTは、2010年までに固定通信事業の光サービスで3000万件の顧客獲得を掲げており、その販促費負担が利益の重しになっている。08年3月期はドコモが販売手数料や携帯電話端末の調達コストを削減することから減益傾向に歯止めをかける計画だが、本格的に増益に転じるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 今秋には、総務省が既存の通信事業者以外の2事業者に2.5ギガヘルツ帯の電波割当てをすることも計画されている。ADSL大手のアッカ・ネットワークス<3764.JQ>、PHS最大手のウィルコム(非上場)が最有力候補と噂されるが、既存事業者であるNTTやKDDIが何らかの方法で応募条件を満たして参入に名乗りを上げる公算が高い。いずれにせよ、新規事業者の市場参入によって停滞気味の国内携帯市場が活性化する期待がある一方、事業者間の競争の激化で各社の収益が影響を受ける可能性もある。
 今年前半は「晴れ」だが、後半はこうした環境変化から「曇り」の見通し。
【吉川明日香記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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