【独占】朝日新聞社長が語った“デジタル時代”の生き残り方 「“等身大の経営”を早くやるほかない」「地方取材のあり方を考え直す」

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縮小
デジタル化の荒波にもまれ、部数の減少が続く朝日新聞。日本を代表するメディアの一角として、どのような生き残り戦略を描くのか(撮影:尾形文繁)
戦後日本におけるジャーナリズムの代表格として、長く存在感を放ってきた朝日新聞社。しかし紙の新聞がデジタル化の進展で構造的苦境に直面する中、かつて800万部を超えた朝刊部数は3月末時点で約327万部にまで減少している。
紙の縮小が続く中、1月にはデジタル版のアプリをリニューアルし、サービス名称の「朝日新聞デジタル」を紙面と同じ「朝日新聞」に変更して紙とデジタルを一体運営する方向性を鮮明にした。6月3日には8月から土曜日の夕刊を休止すると発表し、他紙も相次いで追随を決めた。
東洋経済では、デジタル化の旗振り役を務め、6月24日の株主総会を経て、朝日新聞グループ全体を統括するCEO(最高経営責任者)に就任予定の角田克社長(60)にインタビューを実施。その内容を3回にわけてお届けする。前編となる本記事では、紙の新聞事業に対する現状認識、地方拠点改革などについて考えを聞いた。

「紙中心」は入り口・出口双方で困難に

――新聞業界では紙の縮小が続き、朝日新聞の朝刊部数も10年前と比べ半分以下になりました。直近では、8月から土曜日の夕刊を休止すると発表しています。

私が取締役になってから大きな転換を進めてきた。精査すると直接お客様に届いていない新聞があり、実際にお金をいただくお客様を私たちの部数ととらえる「実売部数中心主義」に切り替えた(編集部注・新聞業界では、新聞社が販売店に卸しても実際の読者に配布されていない「残紙」が存在すると指摘されてきた)。

業界で先駆けて始めたから部数が急降下で目立ったが、いずれ通らなければいけない道だった。プリントメディア(紙の新聞事業)で「等身大の経営」を早くやるほかないと。

いくらよいコンテンツを作って紙に落としても、お届けされなければ何の価値もないし、配達網は現状かなり傷んでいる。新聞配達は(高齢化が進み)60歳以上の方々に配っていただいている。酷暑や休みの問題もあり、総合的に判断して、土曜日の夕刊をやめる決断を行った。

2022年2月のウクライナ戦争を機に、紙の供給の問題も急浮上してきた。原料である新聞用紙の生産が不安定になり、値上げを先駆けてやったが、三菱重工が(昨年6月に新聞紙の印刷に使う)輪転機をもう作らないと宣言した。「紙中心」を懸命に維持・向上させようと思っても、入り口と出口の双方で周囲の環境が許さなくなりつつある。

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