「怒りまくる」自分から卒業、独自の実践で築いた教員ならではの"怒りコントロール術" 怒りの感情がおさまる「仕掛け」が大切
また、教室の後ろの壁に学級目標を掲示しているんですが、僕の目標として「笑顔」と「楽級」の2つを並べています。「楽級」は楽しいクラスという意味です。クラスの子どもたちの顔越しに見えるようにしているので、怒りを感じたらそれを見て、「怒って楽しいクラスを壊してはいけない」と思えるようにしています。
――視覚的な工夫もされているんですね。
今所属している学校では、コピー機の前に「パワハラチェック項目リスト」が貼ってあって、コピー待ちのときに目に入るんです。日常的に読む仕組みがあるからか、パワハラは一切ないですね。
アンガーマネジメントの学びを、教員として成長するきっかけに
――自分に合わせて、怒りの感情がおさまる仕掛けを見つけることが大事ですね。
アンガーマネジメントの手法は、気をそらすとか場所を離れるとかいろいろあるんです。それをそのまま使うのではなく、学校現場の状況や自分の特性を踏まえて応用しています。
例えば、トラブルがあって子どもから話を聞くとき、対面ではなく横に座るようになりました。そうすると目線も同じにできますし、自然に声のボリュームも落とせます。大きな声を出せば出すほど怒りの感情は大きくなるので、横に位置するだけでそれが防げます。
怒りやイライラの感情ができるだけ湧かないように、子どもたちとの接し方も考えるようになりました。たとえば、明らかに子どもが悪いトラブルが起きたとき、どうしても怒りが湧いていたんですが、最初に「あなたはね、本当はいい子なんだよ」と一言かけるようにしたんです。そうしたら、すごく優しい気持ちになれるようになりました。
もう1つ、下の名前を活用することもおすすめです。児童の名前を下の名前で呼びかけると、素直に聞き入れてくれやすいんです。家庭で呼ばれ慣れているからだと思います。また、自分も下の名前で「隼司先生」と呼んでもらうと落ち着いて話せると感じています。
――逆にいえば、そうやって工夫しないと怒りやイライラが湧きやすい要素がたくさんあるということでしょうか。
少なくとも僕にとってはそうでした。小学校はやはり余裕がないと感じます。空き時間も少なく、しかも毎時間異なる教科の授業なので、準備が入念にできないものも出てきます。しかも1人で30人、40人を見なければならない。この余裕のなさは、アンガーマネジメントを学んで怒りと向き合ったことで改めて感じるようになりました。
そういう意味では、アンガーマネジメントの研修も増えましたけど、理論や手法を学ぶだけでなく、僕がしたような失敗例を聞く機会もあるといいんじゃないかと思います。実際にはそういう話はほとんど表に出ないので、研修のときだけでも生の体験を聞く機会があると、自分自身を見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。
――確かに、松下さんのお話を伺っていると、怒りのコントロールだけでなく、教え方や児童との接し方をアップデートするきっかけにしているのが印象的です。
授業や学級経営、子ども、保護者への対応とアンガーマネジメントはつながっていると感じます。授業中に子どもが手を挙げなかったり、手遊びしていたりすると子どものせいにしてしまいますが、それは授業のやり方がよくないのかもしれませんよね。
授業や子どもへの対応がうまくなれば、怒る感情が湧くきっかけがどんどん減っていくわけですから、アンガーマネジメントをただ学ぶだけでなく、授業や子ども、保護者への対応に生かすことが大切だと思います。
(文:高橋秀和、注記のない写真:つむぎ / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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