「怒りまくる」自分から卒業、独自の実践で築いた教員ならではの"怒りコントロール術" 怒りの感情がおさまる「仕掛け」が大切
かなり勉強したという事実も、抑止力になっています。僕は日本アンガーマネジメント協会の講座を受けたのですが、基本的な知識を持っていることを証明する資格のほか、講座やセミナーを開催できるファシリテーターという資格と、子どもたちに教えられるキッズインストラクターという資格も取得しました。時間だけでなく、お金もあわせて20万円くらいかけたので、「そこまでやったんだから」という思いはあります。
――アンガーマネジメントというと、怒りを感じたときに6秒間待つ「6秒ルール」が有名です。
「6秒ルール」、僕には合いませんでした。6秒じっと数えて「我慢できたぞ!」という気持ちになっても、怒りはおさまらないんです。むしろ、時間が経てば経つほど怒りが積み重なっていくんですよ。だから、日本アンガーマネジメント協会の講座を受けたときに聞いたんです。「なぜ6秒なんですか?」と。そうしたら、「昔は4秒だった」と教えてくれたんです。
――6秒という時間自体にはそれほど意味がないということでしょうか。
単にカウントするのではなく、いかに気をそらすかが大切だということです。「6秒間待つ」も気のそらし方なんですよね。怒りの対象を見ないようにしたり、その場を離れたり。アンガーマネジメントの理論や手法をいろいろと学びましたけれども、子どもも教え方も一人ひとり違うように、自分に合った気のそらし方を探すのが一番だと思います。
必要以上に穏やかになり、「叱れなくなった」苦い経験も
――怒りをコントロールしながら、児童に適切な指導をするのは簡単ではない気がします。
これは難しかったです。とくに、アンガーマネジメントの資格を取得したときは、あまりにもたくさんの勉強をしたので、頭でっかちになってしまって苦しい思いをしました。「冷静にならなければ」と、「子どもたちを傷つけないよう笑顔でいなければ」という意識が強すぎて、叱るべき場面でも必要以上に穏やかになってしまったんです。
そのせいで、子どもたちの信頼を失ってしまいました。6年生のクラスの担任をしていたのですが、「先生、あの子たちが自分勝手なことをして私たちは迷惑しているのに、なんでちゃんと叱ってくれへんの?」と言われてしまって。「いやでも、大きな声を出すのはよくないからなあ」などと言い訳をしているうちに、どんどん子どもたちの心が離れていくのがわかりました。
――どうやってその状況を改善していったんですか?
叱るときは叱らなくてはいけないので、短く終えるようにしました。かつ、終えるときは思わず笑えるようなオチをつけるようにしたんです。みんなの前で叱らないと意味がない内容のときは、いくら短くても叱ったままだとクラスの雰囲気が悪くなってしまいます。叱りながらオチを探すので、僕自身も冷静になれます。例えば、「また同じことやってるんか……と◯◯くんのお母さんは言うと思うで」というように言葉を付け加えると、空気が緩みます。
あとは、怒りの気持ちをそらすよう工夫しています。家族の写真を教室と職員室の机の上に置いているのもそうです。怒りを感じても、写真を見たら「爆発したら家族に迷惑をかける」と思えますから。