変質するユネスコ、「南京事件登録」の大問題 ボコヴァ氏は、なぜ"中国寄り"なのか
これについて日本は、中国に対して強く抗議し、申請撤回を申し入れた。またユネスコ関係者に対しても、ユネスコが政治利用される懸念があること、及び我が国の立場を説明し、慎重に審査するように申し入れている。
中国はこれを拒否し、資料の公開も断った。しかし「南京事件」はその犠牲者の数について正確に確定されているわけではない。中国側は「日本軍によって20万人以上の中国人が虐殺され、2万人以上の中国人女性が強姦あるいは集団強姦された」とした極東軍事裁判や、「少なくとも30万人は虐殺された」とする南京軍事法廷を引用したが、これについては当時の南京市の人口規模などから、疑問視する学者は少なくない。「慰安婦問題」に関しても、強制性や待遇、その人数についての中国その他の国の主張は大きな疑問がある。
「慰安婦問題」の登録は見送り
さすがに「慰安婦問題」の登録は「資料の内容に露骨な問題がある」(ユネスコ関係者)として見送られたが、「南京事件」は登録されてしまった。外務省は10月10日、「中国の一方的な主張に基づき申請されたものであり、当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らか」「中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾」「ユネスコの事業が政治利用されることがないよう、制度改革を求めていく」との報道官談話を発表した。
菅義偉官房長官も13日午前の会見で、「資料が本物なのか専門家の検証を受けていない」「政治的に利用されることのないように、制度の透明化を求めたい」「ユネスコへの分担金支払い停止も含めて、あらゆる可能性のある手段を講じたい」と抗議の意を表している。
与党自民党も14日朝、「外交部会・文部科学部会・外交・経済連携本部・国際情報検討委員会・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同委員会」を開催し、「中国が申請した『南京事件』資料のユネスコ記憶遺産登録に関する決議」を採択。翌15日午後に官邸で安倍晋三首相に決議文を手渡している。
実際に、組織改革は喫緊の課題だ。イリナ・ボコヴァ事務局長が指名したIACのメンバーは「専門家」という触れ込みとは異なり、アジアの近現代史の専門家は見当たらない。またボコヴァ氏と同じブルガリア出身者も含まれており、建て前ではIACは他からの干渉を受けないといことになっているが、その意思を反映した疑いがあるのだ。
そもそもユネスコはアマドゥ・マハタール・ムボウ事務局長時代に政治的偏向や縁故人事がはびこった上、放漫財政に陥ったことがあり、アメリカとイギリスが脱退している。この時、予算の4分の1を負担してユネスコを支えたのが日本だった。そんなユネスコをたてなおし、2003年にアメリカを復帰させたのも、日本の元外務官僚の松浦晃一郎前事務局長である。
しかし松浦氏の後任として女性初のユネスコ事務局長に就任したボコヴァ氏には、別の思惑があるようだ。
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