イーロン・マスクの130日(上)強引なやり方で政権内で孤立、最後はトランプにはしごを外される

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なぜトランプ氏の熱狂的な支持者に変わったのか。イギリスの『The Guardian』の2024年8月9日付記事、「Elon Musk’s journey from humanitarian to poster of right-wing memes」の指摘は興味深い。マスク氏は『X』の前身である『ツイッター』の積極的なユーザーだったが、コロナウイルス蔓延の中、その発信が「偽情報を拡散している」として、アカウントを閉鎖されてしまった。同記事は「これが彼の世界との最初の接触経験であった」と指摘している。この経験で「表現の自由」を規制されたと感じたマスク氏はリベラル派に対して幻滅し、反感を抱き始める。

そして2022年4月にツイッターを買収し、「私は表現の自由を支持する。特定の候補は支持しない。かつて私は政治資金と票をヒラリー・クリントンに与えてきた。しかし民主党の指導者たちは不当かつ根拠もなく私を攻撃し、テスラやスペースXを非常に冷遇した。私は共和党候補に投票するつもりだ」と書き込んでいる。

バイデン政権は暗号資産などの新規ビジネスを規制し、富裕層に対する増税の動きを見せていたため、マスク氏を含め多くのIT企業経営者は民主党に対する反感を強めていた。11月の中間選挙投票日前にマスク氏は「独立した有権者は共和党候補へ投票するように」と呼び掛けている。

息子のカミングアウトがリベラル敵視の契機

リベラル派や民主党への反発は単に経済的な理由だけでない。2021年頃から家庭生活が崩壊し始め、それがマスク氏の世界観の変化に結び付いた。マスク氏は3回結婚し、3回離婚し、12人の子供を持つ。

2021年に音楽家の妻と破局し、さらに息子がトランスジェンダーであることを明らかにしたうえで、「生物学的な父親とはどんな形であれ今後一切関係を持たない」と宣言した。同記事は「トランスジェンダーの息子がマスクの政治的な立場を変える理由になった。マスクは『私の子供は死んだ。“リベラルな心のウイルス(woke mind virus)”によって殺された』と語った」と伝えている。

『New York Times』も「規制がイノベーションを窒息させるという恐怖心と、息子の性転換後に“リベラルな心のウイルス”を打ち破るという誓いからトランプを受け入れるようになった」と指摘している(2025年5月29日、「The Techno-futurist Philosophy Behind Elon Musk’s Mania」)。

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