伊藤忠の「事業撤退を検討する基準」3つとは?グループの”黒字会社比率9割越え”を実現する鉄の掟を解説!
1970年代の日本の自動車産業は、まさにそうした才気と活力に溢れていました。
1971年にアメリカでは、排出ガスに含まれる主要な汚染物質の量を10分の1に抑えるよう義務付けるマスキー法が制定されました。各国の自動車メーカーは押し並べて、一度排出してしまったガスを特殊な触媒を用いて浄化する技術の開発・普及に専念しようとしていました。
そんな中で日本のホンダは、触媒に頼るのではなく、エンジン自体の改良によって汚染物質の排出を抑えるCVCC方式を開発。1973年にシビックCVCCを発売し、日本のみならずアメリカ市場でも好評を博しました。
コングロマリットは競争力を削ぐ
世界のコングロマリット企業がなぜ解体していくのか、そしてなぜその動きの中で、日本企業が取り残されているのかを見てきました。多角経営(コングロマリット)は経営陣にとって本業の競争力を維持するインセンティブを阻害するため、本来は自然に淘汰されていくはずですが、終身雇用の維持が自己目的化している日本企業においては特定部門の売却が難しく、売り上げ規模が利益規模や利益率より優先されるため、淘汰のスピードに遅れが見られました。
多角経営からの脱却を主導し、企業価値を向上する能力のある経営者に共通する性質として、売上至上主義に陥ることなく、また安易な目標設定の対外公表も控え、「小さな約束を守る」といった姿勢が挙げられます。とはいえ、経営者の属人的な能力に依存しない仕組み作りもまた大切です。
安倍政権下でコーポレートガバナンス改革が始まってから10年あまりにわたり、社外取締役の導入や強化といった取り組みは順調に拡大してきましたが、形骸化に陥ることなくその機能を十全に発揮するためには、ルール整備を含めたより抜本的な働きかけが必要になるかもしれません。
こうした論点について考えをめぐらすことについて私は、投資先選びの判断力を鍛えたい個人投資家や、これから投資を始めようとしている潜在的投資家にとって有益だと信じていますし、またそのように意識して多少プラグマティックな観点で書いてきました。しかしここでいったん、投資家という視点を離れ、どこに本質的な問題があるのかを俯瞰的に考えてみたいと思います。
日本で働き、暮らしていく生活者として、安定した生活を続けるためには、前提として経済全体の活力が回復・維持される必要があります。そのためには低迷気味の生産性と労働分配率を企業が引き上げ、賃金を上げなければいけません。
企業の成長をリードしていく優秀な人材が各企業の経営層にそろっていれば心配はいらないはずですが、残念ながら、そもそも経営センスを持った人材自体が日本国内には不足しているように見受けられます。結局のところ、この議論は企業や学校における教育制度の問題に行き着くのではないかと思います。
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