今回は2026年3月に上梓された思想家(哲学者)、柄谷行人氏の『定本 力と交換様式』(岩波現代文庫)を読み解きながら戦争と平和を考えたい。
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃、アメリカのイラン攻撃など、非日常であるはずの武力紛争が世界各地で日常化している。私たちは再び戦争の時代を生きるようになるかもしれない。ソ連の崩壊によって、共産主義と資本主義という基本的価値観が対立する時代が終わり、本来ならば平和な時代が到来するはずだった。
4つの交換様式
なぜ現在こうなってしまったのか。この問題に真剣に取り組み、危機からの脱出策を考えているのが柄谷氏だ。
柄谷氏は、22年に上梓した単行本版の『力と交換様式』(岩波書店)で、4つの交換様式という理念型(モデル)を設定して世界の構造を整合的に説明した。交換様式には具体的に次の4つがある。
A:互酬(贈与と返礼)
B:服従と保護(略取と再分配)
C:商品交換(貨幣と商品)
D:Aの高次元での回復
柄谷氏がこう考えるようになったのは、歴史発展の基礎を生産様式(生産力と生産関係)に見いだすマルクス主義の見方では世界の構造をうまく説明できないことが多かったためだ。そして、最終的に経済を下部構造にするというマルクスの唯物史観の方法を放棄し、『資本論』第1巻冒頭の価値形態論を交換様式と解釈することで、世界史を整合的に読み解く新理論を構築した。この考えは宇野弘蔵の経済理論を発展させたものだ。





















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