グーグル傘下のユーチューブはアマチュアの人々も動画をアップロードでき、手軽にシェアできる動画サイトとして有名になったが、有名人や著名なクリエイターたちに資金提供し、「ユーチューブ・オリジナルチャンネル」を開設しようとした理由が見えてくる。
動画配信のネットフリックスは、ケヴィン・スペイシー主演の『ハウス・オブ・カード』という自社のテレビ番組の制作に1億ドルといわれる予算を投じて、他社がしのぎを削る高品質コンテンツの世界に参入した。ネットフリックスはかつて目指したロングテール企業というより、昔ながらのテレビ放送網のごとく振る舞っているようだ。
有名映画監督のイーライ・ロス制作指揮のホラードラマ『ヘムロック・グローヴ』と、ジェンジ・コーハンのコメディ番組『オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック』の2作品は、1エピソード当たりの制作費用が400万ドルと見込まれている。
有料課金の成功のカギはブロックバスター
NBCユニバーサルとニューズ・コーポレーション(傘下にFOXがある)のジョイント・ベンチャーとして2007年に創立されたフールーは、当時のCEOジェイソン・カイラーのいう「プロが制作した世界高品質のコンテンツを、ユーザーが観たいときに、観たいところで、観たい方法で探し出して、楽しめるようにする」という目標に向けて飛躍を遂げていた。2009年には、ディズニー(傘下にABC)が合流し、創設後わずか2年で、フールーは米国で最高のビデオ・コンテンツを提供するオンライン・アグリゲーターとして第一人者になった。
間を置かず、2010年6月、フーループラスを導入した。これに加入すれば、有料会員は月額9.99ドル(のちに値下げ)でさらに多くの番組を、アップルのiPhoneからiPad、ビデオゲームのゲーム機まで、前にも増して多くのプラットフォームで観られるようになった。2012年後半までに、フーループラスの有料会員は300万人を超えて前年の倍になった。この有料課金からの2013年の収益は、8億ドルを超した。フールーの好業績は、すでに重要なポイントを証明した。つまり、人気のあるコンテンツをオンラインで観るためなら、大勢の消費者は料金を払うことも厭わないのだ。
全般的に見て、デジタル技術の進歩は一見、ニッチ・コンテンツの影響力が高まるかに思えるが、現実には正反対の力をもつ傾向がある。かえって、一極集中化と独り勝ちの力学を助長するのだ。メディア・コンテンツの再生産、流通、消費を容易に、かつ廉価にすることで、新技術は世界中の人々に、人気の高いテレビ番組や映画、書籍を入手する手段を次々と与えている。このように急速に進展する市場において、ブロックバスターとスーパースター起用の妥当性は高まり、ブロックバスター戦略の有効性も強まっている。
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