資本主義の欠陥が肥満を生んでいる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
肥満がもたらすコストは、本人によって負担されているだけではない。医療制度を通じた直接的なコストに加えて、たとえば生産性低下や(ジェット燃料の増加、座席の大型化などの)交通コストの増大を通じた間接的なコストをも、社会にもたらしている。
だが、肥満の蔓延は経済成長を台なしにするようには見えない。トウモロコシを原料として加工された食品は、多くの添加物が加えられており、体重増加の主因としてよく知られているが、経済成長の観点からはすばらしいものである。
大農家は(しばしば政府の補助金を受けて)トウモロコシを栽培して稼ぎ、食品加工業者は習慣性がある製品を作るために何トンもの化学物質を添加して稼ぐ。この過程で科学者たちは、最新のインスタント食品が最大限に病みつきになるように塩と砂糖と化学物質を適切に混ぜることで稼ぎ、広告業者はそれを売り込むことで稼ぐ。この結果、かからざるをえない病気を治療して最後に医療業界が一財産築くのだ。
今の状況に対して誰も不満を言えない
この冠動脈的資本主義は、こうした業界すべての企業が上場している株式市場にとってはすばらしい。高度に加工された食品は、研究、広告、医療分野などの高給雇用の創出にもつながる。
この状況に、いったい誰が不満をこぼすことができるのか。それが政治家でないのは確かだ。雇用が多く生まれ、株価が上昇すれば、政治家は再選され、加工食品の生産に携わる業界すべてから献金を受けることができる。実際、米国においては、加工食品が健康、環境、持続性にもたらす影響を政治家が取り上げると、多くの場合、選挙資金が枯渇してしまう。