子どもが不登校に…「専門家を頼る」を前提に大人たちが変えるべき「接し方」のポイント 教員は「通いやすい学校づくり」「線引き」も重要

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日本の心理カウンセラーと精神科医の対応は、「様子を見る」「好きなことをさせる」が主流となっているようです。私は日本の不登校の子も診てきましたが、多くの親御さんが「この2点を守るように言われたけれど、不登校の解消には至らなかった」とおっしゃいます。

「様子を見る」方針は「学校に行く恐怖とまったく向き合わなくてもいい」、「好きなことをさせる」方針は「ゲーム等に興じてもいい」というメッセージを与えることになります。これでは、自発的に学校に行こうとは思いません。この状況が長引き社会との関りも薄ければ、うつ病等の心の病は悪化し、学校復帰や社会との接続は遠のくばかりです。

アメリカでは、このような対処法はまったく推奨していません。アメリカの精神医療・心理学の専門家は子どもへの治療だけではなく、家庭への介入を積極的に行うことで、不登校の解消につなげていくのです。

日本では、不登校の子らにフリースクールなどの「居場所」につなぐことが推奨されていますが、学びが保障されていない限り、一時的に希望を持つことはできても、問題の先送りになることが多いでしょう。ある程度の学歴がなければ経済的に自立することが難しいのは日本も同じはず。学びの場の選択肢が少ない現状では、なおさら学校へ通うことの意義から目をそらしてはいけないのではないでしょうか。

今まで日本人だけではなくさまざまな人種の心の病の治療をしてきましたが、とくに日本人は、問題と向き合わないようにして自分を守ろうとする文化が強いと感じます。不登校児童生徒数が過去最多となる今こそ、心の病や社会で生きていくという現実に向き合った対応が必要ではないでしょうか。

保護者と教員は不登校にどう向き合えばよいのか?

以前の記事でもお話ししましたが、日本の精神医療・心理学は遅れており、その影響の1つとして学校現場での専門人材の配置や体制も整っていません。それでも、多くの不登校の背景には心の病の可能性があると考え、保護者や教員は、子どもをスクールカウンセラー、心理カウンセラー、精神科医などの精神医療につなげていくことが重要になります。

治療については専門家に任せるべきですが、保護者や教員が接し方を改善していくことで、子どもの状態をよくして学校復帰につなげていくことは可能です。

まず大前提として「どうすれば登校できるか」というスタンスで接するべきですが、一方的に大人の考えを子どもに押し付けてはいけません。保護者や教員が、「なぜ登校すべきか」と子どもに理詰めで説明することが多々ありますが、それは「悪いのは学校に行っていないこの子だ」というスローガンを掲げているようなもの。これでは子どもの信頼を失うだけで、不登校の解消にはつながりにくいでしょう。

実は私も、小学校時代はいじめが原因で校長先生に学校を辞めたいと相談したことがあります。さらに、そのいじめが原因で絵が描けなくなり、美術教員も理解のある先生ではなかったため、中学2年生のときは美術の授業を休んでいました。そんな私に、母親や教員はさまざまなアプローチで授業に行くよう詰めてきましたが、「授業に行け」と言うだけで、私の話はまったく聞いてくれず、大切にされているとは到底思えなかったので授業に行く気にはなれませんでした。

周囲の大人たちは、その子がどういう子で、なぜ行きたくないのか、どのような家庭環境かなどについて理解をし、その理解を示してあげることが重要です。私の場合も、しっかり時間を取りゆっくり話を聞き、時には共感し、時には間違いを正しつつ、私の意見や気持ちを尊重してくれる大人がいました。彼らのおかげで、中学3年生からは美術の授業も登校できるようになりました。その人たちのために頑張りたいと思えたからです。

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