「自由が大切だからといって、銃を持つ人の自由を許すとどうなるのか?」ノーベル賞経済学者スティグリッツが問い直す

果たして自由とは誰のための自由なのか?(写真:FabrikaSimf/PIXTA)
自由は人間にとって大切なものだ。しかし、たとえば「銃を持つ人の自由」のせいで失われる命もある。経済活動においても、自由を追求することで、環境汚染などの負の外部性が問題となっている。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・E・スティグリッツ氏は、新著『スティグリッツ 資本主義と自由』の中で、アイザイア・バーリンが表現した「オオカミの自由は、往々にしてヒツジにとっての死を意味する」を引用している。果たして自由とは誰のための自由なのか? 束縛のない自由な市場がもたらすものは何なのか? 本書を一部編集・抜粋の上、「自由」のもたらす負の外部性を明らかにする。
銃乱射事件は氷山の一角
アメリカでは、大量殺人のニュースが毎日報じられている。2020年が始まってからは1日にほぼ2回の割合である。こうした銃乱射事件は確かに悲惨だが、それによる死亡者数は、毎年銃で死ぬ人の1パーセント余りでしかない。
アメリカには、子どもが学校内に入る際に金属探知機を通り抜けなければならない地域もあれば、学校内で銃乱射事件が発生した場合に備えた訓練を幼稚園のころから始めている地域もある。教会やユダヤ礼拝堂へ行く人々でさえ、射殺されるおそれがないわけではない。アメリカは外国の敵とは交戦状態にないが、国内では激しい戦闘が続いている。
ほかの先進国に比べ、アメリカで銃による死亡者数が多いのには理由がある。銃が多いからだ。人口1人あたりで見ると、アメリカにはイギリスのおよそ30倍もの銃がある。銃による死亡者数はおよそ50倍である。
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