「この30年で日本は驚くほど変わった」日本大好きエコノミストと、知日派ジャーナリストが見た日本で起きている”劇的な変化”

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ーーこれは日本の文化的な問題ではなく、個別企業の問題ということでしょうか。

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スミス:まさに。日本の問題は国民的文化にあまりの多くの注意が払われていて、個々の企業文化が十分に研究されていないことにあると思う。重要なのは、パナソニックと任天堂の文化の類似点ではなく、どこが違うのか、という点だ。

人々は日本の国民文化、国民性について語りすぎている。そしてそのほとんどは”神話”だ。私が初めて日本に来たとき、アメリカ人と日本人の両方から「日本は西洋諸国に比べて創造性がない」と聞いた。これはまったくのナンセンスで、完全に間違っている。

実際はその逆だ。日本はアメリカよりも個人レベルでは創造的な国だ。今やアメリカ人も日本人の創造性ーー芸術文化と製品デザインの分野におけるーーのレベルの高さに気づいている。国民的なステレオタオイプはこうした全体像を見誤らせてしまう。

日本人が「リスクを避ける」ようなったワケ

カッツ:日本の国民性に対する神話はエリートによって作られたプロパガンダだ。会社を家族とみなす、あるいは、安定した会社で働くことを好むという考え方は1980年代に始まった。製造業の人々がより高い賃金を得るために会社を転々とする中で、企業同士が手を組んで「会社は家族である」というプロパガンダを打ち出したのだ。

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「日本人はリスクを嫌い、非順応的である」というステレオタイプも、ナンセンスだ。想像力豊かで独創的で、既成概念と戦った人々がいなければ、高度成長期はあり得なかった。こうした中には失敗した会社もあるが、社会的なセーフティーネットがあったため、失敗した人がおちぶれることはなかった。

が、1970年代に「減点主義」と呼ばれる昇進制度が始まって変わった。この制度では間違いを犯したらマイナス評価となるが、いいことをしても「仕事をしたと」しか見なされない。成功しても大した報酬を得られず、失敗するリスクが大きい仕組みだ。

シャープで働いていたある男性は、同社が老舗になるにつれて「チャンスを掴むな、目立つな、間違いを犯すな」という文化の会社になっていくのに飽き飽きしていた。その後、鴻海に買収され「愚かなことはするな、間違いを犯すな、しかしチャンスを掴め。もっと新しいアイデアを出してうまくいかなくても、それは学習経験だ」と企業文化が変わった途端、仕事が楽しくなったという。経営陣が企業文化を変えることができるのだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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ノア・スミス エコノミスト

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Noah Smith

アメリカのエコノミスト。コンテンツ配信プラットフォームSubstackで人気ニュースレター「Noahpinion(ノアピニオン)」を運営。2003年、スタンフォード大学(物理学)卒業。2012年、ミシガン大学でPh.D(経済学)取得。同年、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校助教(行動ファイナンス)。2016年、大学を辞めてブルームバーグに入社。2021年、ブルームバーグ退社後、Noahpinionで執筆活動に。学部、大学院時代には日本に計4年間暮らし、その後も頻繁に来日。現在、ウサギとともにサンフランシスコで暮らす。日本への移住を検討中。

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