「この30年で日本は驚くほど変わった」日本大好きエコノミストと、知日派ジャーナリストが見た日本で起きている”劇的な変化”
もう1つの変化は働き方だろう。2000年代半ばに日本に住んでいた頃は、多くの男性は働きづめで会社のデスクで弁当を食べていた。ランチでカフェを訪れると女性ばかりだった。
が、今は男女平等だ。働き盛りの男性は以前より働かなくなり、父親が積極的に育児に携わり、子どもと関わる時間も増えている。こんな光景は私が初めて日本に住んでいた頃には見られなかった。
日本の都市も改善され続けており、東京と大阪はより機能的になっている。家の広さも変わった。2005年に大阪に住んでいた頃は、いわゆる「ウサギ小屋」のようなところに住んでいたが、今私がAirbnbで借りる部屋や友人宅は、ヨーロッパの家くらいの広さがあるし、設備も整い、素敵になっている。
GDPなど経済統計には反映されないライフスタイルの変化は起きているが、GDPや賃金といった経済的なものを動かすことが最優先事項だと思う。
必要なのは社会変化ではなく、制度修正
カッツ: 私たち2人は、日本の問題はアメリカの問題より解決しやすいという点で一致している。日本の経済パフォーマンスを改善するのにそれほど大きな変化は必要ない。根本的な社会問題があるというより、政治的な停滞による制度の問題によって多くの人的資本が無駄になっている。が、これは修正できることだ。
ーー具体的には何を変えれば?
スミス:1990年代には、日本経済を成長軌道に戻すためには多くの文化的な変化が必要だと多くの人が言っていた。その文化的な変化はほとんど起こった。
が、経済成長力は戻っていない。経済発展の理論に「Oリング理論」というものがある。これは、1980年代にアメリカで起こったスペースシャトル爆発事故で、1つの小さな部品の故障が、シャトル全体の爆発につながったことに由来するものだ。
つまりいくつかの要素が欠けているだけで、成長が大きく妨げられる可能性がある。その日本経済に欠けている穴の1つが、グリーフィールド投資(海外進出する際に、現地法人を設立し、拠点を建設したり、現地で人を雇ったりする投資)であり、高齢者問題だ。