「父親の無関心、母親の情報力、祖父母の財力」がカギ、”ごく一握りの勝者と大量の敗者”を生み出す≪韓国の激烈な学歴社会≫の弊害とは?

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それでも、もがく学生もいる。知人は「みな、元々やる気がなかったわけではない。ソウルの難関大を目指して必死に勉強してきた子ばかりだ」と語る。願いが叶わず、やむを得ず、地方の大学に入学する子がほとんどだという。知人はあるとき、教え子の4年生から就職の相談を受けた。

この男子学生は思い詰めた表情でこう語った。「中国にある韓国大使館のローカルスタッフになりたいと思うのですが、どうでしょうか」。地方大からはキャリア外交官はおろか、特定の国や地域を担当する専門職の外交官になる可能性もほぼ閉ざされている。男子学生は、大使館職員の秘書や運転手などを務めるローカルスタッフなら、自分でもなれるのではないかと考えたという。

外国で就職しなさい

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知人は「ローカルスタッフは、一生をかけて働く仕事ではない。昇進もないし、自分で考えて工夫できる仕事でもない」と説明し、学生に思いとどまるよう諭したという。そのうえで、知人は学生にこう勧めた。

「敗者復活のない世界から抜け出すためには、韓国のシステムから離れるしかない。外国で就職しなさい。学歴に関係なく、語学や営業力などで評価してくれるはずだ」。知人の助言を、この男子学生は、憂いを含んだ複雑な表情で聞いていたという。
 

牧野 愛博 朝日新聞外交専門記者・広島大学客員教授

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まきの よしひろ / Yoshihiro Makino

1965年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大阪商船三井船舶(現・商船三井)に入社。1991年、朝日新聞社入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経て現職。『北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕』、『ルポ 絶望の韓国』(ともに文春新書)、『戦争前夜 米朝交渉から見えた日本有事』(文藝春秋)、『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』(講談社+α新書)、『ルポ「断絶」の日韓』、『北朝鮮核危機!全内幕』(ともに朝日新書)、『ルポ 金正恩とトランプ』(朝日新聞出版)など著書多数。

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