「父親の無関心、母親の情報力、祖父母の財力」がカギ、”ごく一握りの勝者と大量の敗者”を生み出す≪韓国の激烈な学歴社会≫の弊害とは?

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知人に言わせると、在学生の勉強への意欲は著しく低い。昼食後の講義ともなると、ほとんどの学生が寝ている。学習意欲がないので、論文形式の試験はできず、選択式にしている。試験当日の1時限目に復習、2時限目に試験の予想問題を教える。3時限目に試験をするが、それでも答えられない。

就職は厳しい。韓国では大学4年の春から就職活動をするが、皆苦戦している。就職が決まると、学内に「慶祝」と書かれた記念プレートが掲示されるほどだ。中国関係の学科の卒業生の場合、ソウルや済州島など中国人観光客が多い場所のホテルや中国関係の貿易をしている中小企業などに潜り込むのがやっとだという。

これはすべて、韓国の激烈な学歴競争社会が生み出した弊害だ。子供は未就学児のころから、「ハグォン(学院)」と呼ばれる塾に通い始める。下校時間になると、学校の周りに黄色いバスが集まり始める。塾の送迎用バスだ。

そこで、子供たちは毎晩、午後10時過ぎまで勉強する。子供を集めるために塾の競争も過熱し、地方自治体によっては「深夜から未明にかけての塾の営業禁止」という条例を定めているほどだ。

「父親の無関心、母親の情報力、祖父母の財力」

ソウル近郊に住む知人男性には数年前に就職した長男がいる。長男はめでたく、最難関のソウル大を卒業した。男性は長男が小学校のころから、毎月200万ウォン(約20万円)の「私教育費」を投じてきた。この男性は「ソウル大の合格者の住所をみると、みなソウル・江南(カンナム)などに集中している。評判が良い学院があるところばかりだ」と語る。

こうした地域は高級住宅街であることが多い。男性の知り合いは、子供のために江南に移り住んだ。20坪(約66平方メートル)の小さなマンションだが、毎月の家賃の代わりに大家に支払った「チョンセ」と呼ばれる保証金は20億ウォン(約2億円)にものぼったという。

韓国では最近、ドラマ化もされて有名になった「イルタ講師(カンサ) 」という存在がある。「どんな難関校にも入れてしまう一流スター(イルタ)講師」という意味だ。

韓国のSNSをのぞくと、「年収5億ウォン」とか「高級外車を買った」などバブリーな生活を謳歌する「イルタ講師」たちの書き込みが目に留まる。こんな職業が存在すること自体、「何としても良い大学へ」と願う親や子供が数多くいることを物語っている。

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