「通勤時間を超短縮」「乗り心地も最高!」…なのに全然利用されてない「東京都"推奨"の船通勤」。お役所ならではすぎる、その理由とは?
とかく予算がかかってしまう水辺の防災工事は議会で否決されがちで、多くの地域で「河川敷に集客施設整備」など別の事業を名目上のセットにして、予算を通すケースが多い。
大阪では、「万博開催・アクセス航路の開設」という大義名分が加わり、災害対策の懸案であった「淀川本流の閘門新設」「船着場の整備」が実現した。一方で東京では、通勤船を含めた「船のネットワーク維持」が、防災体制を維持する大義名分・名目としてプラスされているといえるだろう。
こうして見ると、「船通勤」は本来の「公共交通としての価値・利便性」とは別の要素にも左右される。しかし、いまの「豊洲~日本橋」「晴海~日の出」航路は移動手段として使い勝手が良く、何とか存続してほしいものだ。
意外と多い「船通勤」がさかんな地域 その条件とは?


地方では尾道市向島(広島県)、北九州市若松区・戸畑区(福岡県)、鹿児島市桜島などで、「船通勤」が盛んだ。
どの地域も、陸地・橋より海を横切るほうが圧倒的に近い。かつ尾道市は向島側に造船所や高校があり、北九州市も鹿児島市も、向こう岸に都市の中心街がある。これらの地域は「圧倒的に移動距離をショートカットできて、対岸に通勤先や学校がある」からこそ、通勤手段として船が生き残っているのだ。
ただ、各地域とも少子化や人口減少などで航路の利用者は減少、採算に苦しんでいる。しかし通勤・通学を担う生活航路は10円単位の値上げでも紛糾するため、北九州市・若戸渡船や尾道市の渡船のように「1乗船100円」と、傍目に見て心配になるような格安運賃を維持せざるを得ない。
いまだに利用は盛んとはいえ、各都市とも億単位の補助金や第3セクター化などで、何とか維持させているのが実情だ。これらの地域は100年、200年単位で船での移動が根付き、税金投入に異議を唱える人も少ないからこそ、渡船が存続していると言えるだろう。



世界に目を向けると、都市としての規模が東京と似ているタイ・バンコクのように、「チャオプラヤ・エクスプレス・ボート」が通勤手段として定着している地域もある。
東京の「舟旅通勤」航路がどこまで地道に支持を広げるか、今後の動きに注目だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら