「通勤時間を超短縮」「乗り心地も最高!」…なのに全然利用されてない「東京都"推奨"の船通勤」。お役所ならではすぎる、その理由とは?

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就航している2航路は、現状で「1便の利用者が数名~十数名」といい、通勤利用者をほとんど見かけない。なお、2022年には6航路を期間限定で就航させたものの、利用者は「14日間で2848人」。マイクロバスやジャンボタクシーで運び切れる程度であった……。

鉄道・バスに次ぐ第3の通勤手段として船を定着させるには、利用があまりにも寂しい状況なのだ。

東京都が普及させようとしている「船通勤」は、なぜ伸び悩んでいるのか。そして東京都は、なぜ川や海での「船の維持」にこだわるのだろうか。

船通勤の弱点「通勤時間に船がいない!」

「船通勤」航路で通勤する人が少ない理由は、はっきりしている。通勤ラッシュ時に使える便がないのだ。

豊洲~日本橋間は、始発は豊洲発16時、日本橋発16時30分発、最終は20時台。晴海フラッグ~日の出間だと、始発は晴海発8時30分、日の出発8時45分、最終は10時台。

「舟旅通勤」運航は民間の遊覧船事業者に委託され、ふだんは遊覧船・チャーター船として航行している船の“スキマ時間”を活用して運航しているため、運航時間も短く就航も週3日程度。通勤向けというより、プロジェクト名に「通勤」とついている、というだけの話だ。

また、船員さんに聞いたところ、「春・夏には利用者が増え、秋・冬には激減する」という。船上は風が心地よいものの。イコール、冬場は寒い。船内の寒さだけでなく、まわりに建物がない晴海では「(桟橋の先に停まった)船にたどり着くまでに、強風で芯まで凍える」とのこと……。

「夏場に少しだけお試し」といった理由での乗船が多いものの、年間を通じての利用には、なかなかつながらない。

また、片道500円(天王洲~五反田航路は900円)という、電車やバスより大幅に高い運賃が利用を阻む。水の抵抗を受けて進む小型船は、クルマ・バスよりはるかに燃料費が高く、着岸・接岸を行う船員などで「ワンマン運転」が難しく、嵩んだコストを反映せざるを得ない。

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