流美子さんにとって東京移住はまさにいいこと尽くし。何一つ嫌なことも困ったこともなかったというが、ひとつだけ気になるのは夫の存在だ。単身赴任の夫は定年後、どうしたのだろうか。
「夫は移住して4年くらいたった頃に定年になり、東京に来ました。ただ、私とは性格がまるで違います。他者と話をすることを好まず、かといって私を否定することもない。
とりあえず私がご飯の準備をしておけばよく、あとはお互い好きなようにやっています。夫も趣味はパソコンでの将棋と碁、それに絵を描くことです。出不精で、家で過ごすことがほとんど。旅行に行くこともありません。
私が娘の家に行くときも、一緒に行くことはありませんし、必要以上に関わろうとしません。でも、それが自然で、お互いに干渉せず、うまくやっています。孫が自宅に来る時はさすがに会話していますが」

終活も自然に話せる家族関係
そして、移住から20年弱が経ち、年齢を重ねた今、終活についても家族と自然に話せる関係が築かれている。
「まず娘に伝えているのは、私には延命治療はしないでいいということ。娘からは『骨をまくのは海か山のどちらがいいか』と聞かれたりしています。私は『海は深くて嫌なので山のほうがいい』などと返していますが(笑)」
人生の後半に東京へ移り、自分らしい人生を築いた室星さん。その歩みは「自分のやりたいことを諦めずに進む」ことの意味を教えてくれる。
「移住してからの仕事や生活は健康だからできるのです。本当に東京に早めに移住してよかったと思っています」
——人生は一度きり。けれど、どう生きるかは自分次第。やりたいことをやり抜くことは簡単なことではないが、やってみる価値はある。室星さんの話を聞いていると、納得できる人生を全うするための勇気と希望、そしてヒントをもらえた気がした。
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