読解力のない人はデジタルの恩恵を得られない 因数分解が物事を理解するための「カギ」

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まず、個別の情報は点です。これだけだと1次元です。次に、点と点を繋いで2次元。さらに繋いで、3次元で立体的になる。そこに歴史的な視点、過去から現在にわたってどう変化したかといった時間の感覚まで入れると、4次元的な物の見方ができる。

この3次元というのが、空間構成能力だと思っています。小さな因数分解から始めて、ニュースやドラマなどの日常的なことでトレーニングを繰り返して、3次元の複層的、立体的な見方や、歴史などの4次元の視点も加えていくといいですね。

切り出された情報だけで判断してはいけない

SNSなどで発信をしていると、脊髄反射のように言葉尻をとらえて批判したり、怒ったりする人が多いことに驚きます。これは、短絡的な1次元の思考で止まっている人で、シン読解力が欠けている。そして、こんなことを繰り返してもシン読解力は磨かれません。

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発言や動画の一部だけを切り取って、「けしからん」と言うけれども、全体像を見ると全然そんな意味のことを言っていないことってよくあります。ちょっと気になる発言があったら、これは全体として本当にそう言っているのかを確認する作業が必要だと思います。

デジタル・ネイティブの若い世代だから、そうだというわけではないのです。最初にもお話ししたように、年齢は関係ない。高齢者でも、新聞の見出しやワイドショーの切り出した情報だけ見て、決めつけてしまう人も多くいます。

重要なのは、取り出す情報を多面的に読み解き、それらの情報を頭の中で組み立て直す力です。読み解くためにはシン読解力が必要だし、シン読解力がないと書く力も育たない。

話す文章と書く文章はまったく違うのですが、それを理解せずに話し言葉のまま文章を書く人も増えてしまっています。X(旧ツイッター)などが広がって、短い文章が多くなります。短い文章だと論理よりも感情に流される傾向があるからかもしれません。

話し言葉、つまり会話はみんなの間で行ったり来たりして成立しますが、書く文章には論理的にものごとを構築する力が必要です。だからこそ、基礎となるシン読解力が大切だと思います。

(構成:岩辺みどり)

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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