「日本企業で働き続ければよかった…」 努力しても報われない《ブラック化する中国企業》で働く中国人の本音

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薛さんは2019年、中国企業の日本市場マーケティングの仕事に転職した。その選択が間違いだったと気づいたのは、結婚して子どもが生まれてからだという。

中国のIT企業は中国政府の締め付けもあって2021年以降成長が鈍化。目標達成へのプレッシャーが厳しくなり、成果を上げられないとすぐに首を切られるようになった。

育児休業を終え、会社に時短勤務を希望すると上司に「あなただけ特別扱いはできない」と言われた。

薛さんは、「中国は少子化が加速し、政府が出産を奨励していますが、企業にとって働き方に制約がある社員は足手まといで、代わりはいくらでもいます。働き方の激しさが、日中で逆転してしまった。日本企業に残っていたら、仕事と子育てをもっと楽に両立できたのに」と嘆く。

労働者にとって日本は桃源郷

薛さんと同じ時期に日本で就職し、今年で勤続10年になる劉媛媛(仮名、34)さんは「日本企業を辞めなかったことで2人目を出産できた」と断言する。

劉さんも日本企業が外国人採用に積極的になったタイミングで、2016年に中国の大学を卒業して首都圏の金融機関に就職した。ただ、就職先では日本人とほぼ同じ業務を割り当てられたため、最初の数年は言語や文化の壁を感じ「毎日のように辞めて中国に戻ろうと考えていた」という。

劉さんが日本に残ると腹をくくったのは、30歳のときに妊娠がわかってからだ。

夫の職場は自宅から遠かったが、コロナ禍で在宅勤務になり、家事・育児に関わりやすくなった。

「勤務先には、子どもを出産するたびに育児休業を3年取り、時短もフルに活用している女性従業員が複数いました。農村の出身で、全寮制の中学・高校に進学して頑張り続けてきた私はその様子を見て、適度に働いたり休んだりしながら子どもを数人産みたいと考えるようになった」

コロナ禍が収束しても夫は月に数度の出社にとどまっており、劉さん夫婦は千葉県にマンションを購入した。

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